□冥姫 第四十五話 後編
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白夜叉……有名だから知ってるけど坂田さんだったとはね。


「だから元だって言ってんだろ!
恩を仇で返すのがてめーらの流儀か!」

「前々から怪しいやろーだとは思っていたが
まさか桂どもとならぶ伝説の攘夷志士だったとはな」

「世間って狭いですね」

「今は真っ当で善良な市民であることは、てめーらだってご承知だろーが」

「鉄殺そうとしましたよね
どう考えても殺人未遂ですよね」


山崎さんが淡々と罪状を述べる。


「だからそれは作戦……
ああわかった!じゃあ妥協して俺が元攘夷志士だったとしよう
だったらこいつも元攘夷浪士だろーが」


坂田さんの右隣には佐々木さんが座っていた。


「自分、責任をとって切腹するっス」

「え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙」


このままだと坂田さんも切腹することになる。


「今回のことは全部自分の責任っス
みんな…副長に攘夷浪士だったのがバレるのが怖くて……
そのせいでこんなに迷惑をかけて

副長から預かった手紙さえ誰にも届けることができなかった」

「手紙はまた出せばいいさ
約束しただろう、俺より強くなるって
今度はお前の番だ
確かにてめーのアニキには届かないかもしれねェ
だがお前と同じロクでもねえアニキには届くさ」


言って土方さんは近藤さん達を見る。


字が読める保障はないと言って皆さんが笑う。


「てめーの手紙…俺達はいつでも待ってることを………忘れ…」


土方さんの身体が傾いてドサっと倒れた!


「!!副長!!」

「土方さん!?」


土方さんが病院に運ばれたあと、隊士の皆さんが土方さんにあったことを詳細に教えてくれた。


佐々木との戦いでかなりのケガを負っていたのは知っていた。

遠くからと言えど階段を上っている姿を見たから。

それを無言で見送ったのは、口出し出来なかったから。



−−−



「こんにちは土方さん」

「また来たのか」


今のところ毎日お見舞いにきている。


『トシがおとなしくしてるかの監視役を美月ちゃんに任せる』


近藤さんのお墨付きだ。


「それより今日はお花持ってきました」


手に持っていた花束を土方さんに見せる。


「バラばっかだな」


花屋さんにあった色とりどりのバラを全色。


「目玉はこの青いバラとレインボーローズです
珍しいでしょう?着色ですけどね
トゲは取ってもらったので触っても大丈夫ですよ」


トゲは治るまで安静にしてほしいという意味を込めて、敢えて取ってもらった。


「わーったよ、おとなしくしろってんだろ」


少し不貞腐れたようにベッドに寝転がる。


「花瓶も持ってきたんで、活けてきますね」


給湯室で花瓶に水を入れる。

 
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