□冥姫 第四十五話 中編
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「それより私の携帯───」

「美月ちゃんとメル友になりたきゃ、真選組全員を認めさせてからにしてもらわないと、

俺は絶対に認めませんけどね」


ひょうひょうとした物言いに冗談のような内容
にも関わらず冗談には聞こえないのはなぜだろう。


私が持ったままになっていた紙切れを私から奪い、ビリビリと破いて紙吹雪きのようにパラパラと捨てた。


「じゃあ」

「私もこれで失礼します」

「旦那もいきますぜ」

「いくわけねーだろ!
俺の10000000??

あれ?一、十、百、千……?
とにかく返しやがれェェ!!」


別れの挨拶を告げ、坂田さんの帰りを待たずに見廻り組の屯所を出た。

50メートル歩いたあたりで沖田さんに声をかける。


「さっきはありがとうございます
助かりました、それと私のせいですみませんでした」


頭を下げた。


沖田さんの心遣いに泥を塗らないように黙って見ていた私は、見守ることしかできなかった。


差し障りなく断りきれる自信はなかったから。

料金やらなんやらを理由に断っても食い下がってたと思うし。


「前に言っただろ、美月ちゃんは俺が護るって」


……言われたっけ?


疑問が顔に出てしまったようで、沖田さんの表情が少しガッカリに変わる。


「ご、ごめんなさい」


ため息一つで許してくれた。


「今度は覚えててくだせェ
美月ちゃんは俺が護る

護るから………俺と……………
俺とお茶でも飲みにいかねえかィ」

「いいですよ」


さっそく二人で入ったファミレスで向かいに座ってお茶を飲む。


お茶はおいしい、でも晴れやかな気分にはならない

私のせいで佐々木さんの沖田さん対する印象は悪くなっただろう

それが原因で何かがないとは言いきれない。


だからもし佐々木さん絡みで何かあったら私が沖田さんを護ろう。

そう言ったら沖田さんは護らなくていい、と言って不毛な水掛け論が始まる気がするから言わないでおこう。


思いを悟られないよう静かにお茶を飲みながら思った。



翌日

見回りしていたら佐々木さんを見かけた
手紙のような物を持って走っていく。

お使いかな?



付いていけばよかったと思ったのは夜になってからだった。


知恵空(チェケラ)党という攘夷集団から佐々木さんを人質にしたと犯行声明が届いたからだ。


大勢の隊士さんや近藤さんたちは各々パトカーに乗り、サイレンを鳴らしながら現場に向かう。


まるで示し合わせかのように見回組と同時に現場である廃墟に到着した。

 
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