□冥姫 第四十五話 前編
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「ケンカのときは仲間(ダチ)召集してすぐ駆け付けっから、いつでも呼んでくれよな」


土方さんの部屋から出てきた佐々木さんの台詞を聞くかぎりでは、仲良くなれたように見える。


一方の土方さんは口から出た言葉こそ肯定だったものの

障子のフチに自ら頭をガンガンぶつけたかと思うと、怒りの形相で刀を鞘から出すのを必死にガマンしていた。


……土方さん、大丈夫かな?
早くも限界を突破しそう。





今日の屯所のメニューはカレー。

ごった返す食堂で、なぜか佐々木さんはラッパー系の友人を二人つれて配給係をやっている。

とりあえずカレーをよそってもらおう。


「Pretty Girl!」


私をみた佐々木さんが言って友人二人がピーピーと指笛をならす。


ちょっとびっくりした。


それらを軽く流してカレーをよそってもらい、席についたところで土方さんと山崎さんの話し声が聞こえてきた。


配給係は土方さんがやらせているそうだ。


そのあと山崎さんと佐々木さん達との間で、ちょっとした騒動があったのだが
土方さんが怒(いか)っているのが見て取れた。






今日は真選組全体での稽古の日

さっそく近藤さんの激が飛ぶ。


「剣は体全体でさばけ!小手先では振るな!
剣術はチャラついたスポーツじゃねーんだ!
小技じゃなく一振りに……」


ゴッ
近藤さんの右頬にバスケットボールがぶつかった!?


ボールの飛んできた方向にはバスケをやってる佐々木さんと友人二人。

バスケットゴールまで設置されている。


近藤さんがボールを返すとドッジのごとく、また顔にぶつけられた。


そのせいか


「左手はそえるだけだ!」


剣術がバスケの指導に切り替わった。


食堂のときと同じように怒れる土方さんに声をかける。


「私が怒(おこ)りましょうか」

「………」


それについては何も言わなかった。








土方さんは佐々木さんとパトカーで見回りに出ていった。

大丈夫かな。


私の心配は杞憂で終わらなかった。


一悶着あったそうだ、
ただし見廻組と。


詳細は噂になって聞こえてきた。

見廻組局長 佐々木異三郎は佐々木さんの異母兄弟。

佐々木異三郎は嫡男で剣は二天、筆は天神(学問の神様)で三天の怪物

平たく言えば文武両道だけど二天と天神には文武両道では足りない気もする。


あとケンカの原因は土方さんが佐々木さんをかばったから、らしい。


でも真実だと思う、
だって佐々木さんが物凄く変わったから。

 
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