□冥姫 第四十二話
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…もしかして……

いつもはオフにしてある霊視スイッチをオンにして棺桶の方を見ると、半透明の親父さんがこっちを見ていた。


「お前も…見えてる?」


坂田さんが土方さんに確認するように問い、
土方さんが棺桶を指差すと坂田さんは頷いた。


やっぱり私以外だと二人にだけ見えている。


「あああアレさ、ひょっとして見えてるの俺達だけなのか…
あーいう それなのか」


大丈夫です土方さん、私も見えてます。

そう言おうと思ったら、間髪入れず坂田さんが答える。


「あーいう それって、どーいう それだ
だ、大丈夫だよな?」


あえて直接的表現を避けてヒソヒソ喋る二人。


「大丈夫なわけねーだろ
そーいうアレとかこーいうアレとかじゃなくて
アレは…親父だよな」


土方さんがついに核心を突いた発言をした。


「ば、バカ言ってんじゃねーよ
親父はアレだろ?
棺の中で永眠してんだ
この葬式だって親父の葬式だろ
なにより親父は半透明じゃなかった
もっとはっきりしてたよ」

「二人ともいいかげんにしてください」


ヒソヒソ声で注意した。


「だってアレだ、半透明な親父がこっち見てる…」


言ってまた親父さんを指差す土方さん。


「お葬式ではよくあることですよ
半透明な人が見えても見えてないフリをしておけばいいんです」

「え?もしかしてアレ…
美月ちゃんも半透明な親父が見えてる?」


恐る恐るといったふうに聞いてきた。


「見えてますよ」


スイッチオンにしたから。


「宮中、落ち着けェェェ!
いいから落ち着け!」

「私は落ち着いてますけど」


どのへんが慌ててるように見えたんだろう?


「なななななんで親父が半透明なのか美月ちゃん分かる?」

「それはアレですよ
幽体だから」

「幽体ってアレか、オバケのことか」

「そうとも言います」

「そっかーオバケか」


妙に落ち着いた体で坂田さんが答えたから、やっと落ち着いてくれたと思ったのに、それは勘違いで血相を変えて二人は逃げ出した、

でも足が痺れてるせいで襖(ふすま)に倒れこみながら盛大にこける。


「ちょっと二人とも何してんすか!」


見かねた新八君が注意する。


「厠!ちょっと厠に」

「それはいいですけど、静かに行ってくださいよ!」

 
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