□冥姫 第四十一話
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近藤さんを見送った私達は風雨を避けるため室内に戻った。


「なあ宮中、お前なら台風の日にデートに行くか?」

「電話で相手に連絡して延期してもらいます」

「そうだよな…」


部屋に沈黙が流れる。


「デートって言やァ美月ちゃんはどんなデートがしてみたい?」


沖田さんが空気を変えようとしたのかは分からないけど、空気を変えたかったので話に乗る。


「そうですねぇ、ん〜と
お互いの仲が深まるような、
思い出に残るような、
またデートがしたいなって自然に思えるようなデートですかね」

「そういうんじゃなくて、映画を見に行くとかプラン的なので頼みまさァ」


プランねぇ……。

頭の中で色々なモノが回る。


急にプランって言われても思いつかない。

悩む私に土方さんが助け船を出す。


「こういう場所に行きたいみたいなのは無いのか」


今のところ無い。

でも兄上となら…。


「…どこでもいいって言うのが正直な返答です。
逆に言えば、その人と時間を共有したり、思い出を共有することが大切であって場所は二の次なんじゃないでしょうか」


兄上とどこに行きたいか考えた結果、出た結論がこれだ。


「まあ、一応基本だな」


私の返答に可もなく不可もなくといった反応を見せる土方さん。


沖田さんは納得していないのだろう、僅かで分かりにくいけど
しかめっ面だ。


そんな顔されても今は思いつかないからどうしようもない。


それにしても沖田さんがデートプランをこんなに聞いてくるとは…
前に近藤さんが言ってた本命さんとの参考にしたいのかも。


二人に本命がいる、と聞いたときは衝撃的に驚いたものだ

そんな素振りをちっとも見たことがなかったから。


「そう言うお二人はどうですか」

「は?」


土方さんが素っ頓狂(すっとんきょう)な声を出す。


「どんなデートがしたいですか」


去った沈黙が戻ってきた。


土方さんは無言で立ち上がる。


聞いてはいけなかったかと内心で少しオロオロした。


「…そうだな……その内…教えてやるよ」


ニヤリと笑って部屋を出ていく。


なぜ勿体(もったい)ぶるんだろう?


次いで沖田さんが「土方さんと同じ意見なのは癪だが」と言いながら立ち上がった。


「…いつか…教えてやる」


沖田さんは真剣な顔をして部屋を出ていった。


・・・・・はぐらかされた。

 
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