□冥姫 第四十一話
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「それにしたってなァ…あの女
他になにか言ってなかったか」

「別に!デートの日時と待ち合わせ場所。
あっ、あと つけ回すのも店にくるのもこれっきりにしてほしいって言われた
今後はお付き合いが始まるわけだから必要ないよね」


ああ…そういうことか…。


「…それって最後に一回だけデートしてやるから忘れろってことですよねィ」

「シャーラップ!虎穴に入らずんば虎子を得ず!
枝先に行かねば熟柿(じゅくし)は食えぬ!

最後だろうがこれはまたとないチャンス、起死回生の九回裏
逆転ホームランを放ってみせる!!」


そう、うまくいだろうか?







日曜日

今日は近藤さんのデート日
…なんだけれども…。


「…台風直撃だってよ」


屯所の門の前に立ちつくす近藤さんを見兼ねて三人で近藤さんの元に行き、土方さんが声をかけた。


「この雨じゃ女もこねーよ」

「前に台風直撃で野球のドーム中継が中止になったことありましたよね」

「ついてやせんねー近藤さん」


強風に煽られ、雨は斜めに降っている。


「今日は外出するなってお天気お姉さんが言ってたし
丁度よかったじゃないですか
野球はまた日を改めればいいんですよ」


「九時か、ちと早いが行ってくる」


約束の時間は昼一時。

この雨の中 四時間待つつもり?だよねぇ…、
お妙さんがこなかったらどうするんだろ。


「…近藤さん」

「大丈夫、じきに天気もよくなるさ」


土方さんの呼び掛けにも考え直すことはなくガハハと豪快に笑う。


「雨が降ろうが槍が降ろうが俺の愛をとめることはできない
いってくる!」


親指をグッと出した近藤さんの手首に、降ってきた何かが刺さった

まさかだけど、刺さった何かは槍だった。


血が吹き出す。


「え?なにこれ」


上を見ると雨のように槍が降ってきている
しかも狙いすましたかのように全部近藤さん目がけて。


「大変です副長ォォ!
飛行中の貨物船が一部炎上して荷の一部が上空から落下したと」


慌てた様子で隊士さんが走ってきた。


「…そうか、大事(だいじ)ない

全部ここに落ちてきてるから」


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」


槍から逃れながら近藤さんは走っていった。


…私がさっき言った外出しないほうがいい、は お天気お姉さんが言っていた言葉だ

ただし天気予報ではなくブラック星座占いで、お天気お姉さんが言っていた言葉だ。

 
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