□冥姫 第三十九話
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これは仮の話だけど

たとえば、私が捨てネコや捨て犬を拾ってきたとして

屯所で飼ってもいいですか?と聞いても


「ダメだ、元いた場所に捨ててこい」


瞳孔が開いた鬼と呼ばれる副長の人がそう言うに決まっているのだ。






いつもと変わらず見回りしているとき


「美月ちゃん」


後ろから坂田さんと思わしき声に呼ばれたので立ち止まり振り返った。

見れば新八君と神楽ちゃんもいる。


「こんにちは、皆さんお揃(そろ)いでお出かけですか?」

「依頼で野良ネコを捕まえに行くんです」

「ネコ?」

「ホウイチとか言う性悪ネコがいるらしくて捕まえてほしいってさ」


野良ネコに詳しくないから名前を聞いてもピンとこない。


「こういうネコなんですけど見かけませんでしたか」


新八君が言いながら写真を見せる。

写真にはあまり顔つきのよくない白と黒の混じったネコが写っていた。


「耳がないね」


耳がたれてるのかと思ってよく見たけど、なかった。


「耳のないホウイチ…
“耳なしホウイチ”みたいだね」

「耳なしホウイチ?」


神楽ちゃんが眼をパチクリさせる。


「怪談っていう本に載ってる有名な話だよ」

「ネコの話アルか?」

「ネコは出ないかな。
琵琶法師と怨霊の話だよ
昔ね、琵琶法師が―――」


「新八ー!神楽ー!
いつまでのんびりしてんだ、
おいてくぞコノヤロー」


いつ移動したのか坂田さんは離れた場所にいた。


怪談も…苦手なんだろう。


「すみません美月さん」

「またネ」

「うん、バイバイ」


二人は坂田さんのところに走って行く。

坂田さんはバイバイと手を振ってきたので微笑んで手を振り返した。


歩きながらちょっと考える。

坂田さんが怖がるということは土方さんも怖がるのかな

絶対 何がなんでも認めないだろうけど。


『俺がそんな話でビビるわけねェだろ』


そう言って強がってる姿が脳裏に浮かんで消えた。


「あ」


悠々と歩くネコが目の端に映る。


焦点(しょうてん)をネコに合わせようとするも、すでに影すら残っていない。

はっきりと見たわけではない
でも、白と黒が混じって耳がないように見えた。


写真に写っていたネコに生き写しに見えたけど、坂田さんたちはここにいない。

それに居たとしても私には捕まえる義務も探す義務もない。


私は私の義務である見回りを続けた。

 
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