□冥姫 第三十八話
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「斬った人間のツラなんてイチイチ覚えてられねーや、
戦いの最中は一瞬の迷いさえ命とりになる

そんな戦場にまぎれ込んだパンピーとテロリストを判別するなんざ無理ってもんでさァ」

「確かに無理ですね
判別方法があるなら教えてほしいですよ」

「つまり沖田君は何も覚えてないけど否定もしねーと?」

「俺が殺ったにせよ違ったにせよ
戦場でモタモタしてた鈍臭ェこいつの親父が悪いってことでさァ」


そんなこと言ったら…。


「貴様はァァ!!」


予想どおり霧江さんが立ち上がって激昂する。


「貴様が殺したんだ
殺してやる!!絶対に殺してやる!!」


よっこらせと沖田さんが立ち上がる。


「惜しいねェ剣の腕さえあれば美月ちゃんに次いで真選組(うち)に欲しい気骨だ。

だが仇討ちごっことは言え 俺の戦場(せかい)に少しでも足を踏み入れたら
瞬時に肉塊にするぜ」


そう言った沖田さんは人を斬って…戦場と同じ顔をしていた。


「んじゃあとはよろしく
金は置いときます
行こうぜ美月ちゃん」

「はい」

「絶対 仇をとってやる!!」



万事屋を出て二人で歩く。

デジャブだ

意図せず共犯者になってない?


「美月ちゃん…今回のことは二人だけの秘密にしといてくんな」


唇に立てた人差し指を当てて内緒(ないしょ)のポーズ。


「いいですけど、ホントに忘れたままですか?」


忘れたままの沖田さんが万事屋さんにお金を払ってまで霧江さんを預けるとは思えない

覚えている もしくは思い出したというなら解るけど。


ジッと沖田さんの目を見つめた。


「そんなに見つめられると照れちまう」


さすがに誤魔化されてあげられない。


「沖田さん…私はもう共犯者なんですよ
秘密を共有するのは当然じゃないですか」


権利は主張しておく。


沖田さんは諦めたように息を吐いた。


「わかった教える
根底にあるのは属に六角事件と呼ばれる二年前の事件でさァ

美月ちゃんは六角事件の資料が資料室のどこにあるか知ってるだろ」



屯所 資料室

六角事件の資料を手にとった。


二年前 旅籠(はたご)六角屋で創界党(そうかいとう)という過激攘夷組織と沖田さんを含む一番隊の隊員たった五名による争闘(そうとう)があった。

 
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