□冥姫 第三十八話
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見回り中
沖田さんがアクロバティックな動きで女の子の首を足でクリンチし、頭を地面に叩きつけるところを偶然目撃したところから

今回の事件は始まる。





何事かと沖田さんに駆けよった。


「沖田さん何か…」


沖田さんの腹部には脇差(わきざし)が突き刺さっている。

わずかに目を見張った私の視線に気づいた沖田さんは


「大丈夫 大丈夫
ほら このとおりでさァ」


そう言ってタバスコを取り出した

脇差は腹部に忍ばせていたタバスコに刺さったようで怪我もないようだ。


「一瞬 焦りましたよ
ところでこの子は誰ですか?」


叩きつけられて気を失っている女の子に視線を移す。


「知らねェが父親の仇とか言ってた」



‐‐‐



沖田さんは殺人未遂の女の子をグルグルに縄で縛り
屯所ではなく万事屋さんに連れていった。


通してもらった客間で坂田さん、神楽ちゃん、新八君を正面に、沖田さんが仇で命を狙われたと大まかな事情説明をする。


「つー訳なんで
非合法の遊廓あたりに売り飛ばしてもらえますか
ガキだがマニアには高く売れますぜ」

「冗談にしても そういうのはよくないですよ」


ちょっと質が悪い冗談だ。


「相手が美月ちゃんなら俺だってこんなこと言わねェや。
頼みますよ旦那」


「沖田君さ 人を奴隷商人と勘違いしてない?」

「不法入国した小娘 ただ働きでコキ使ってるんだから奴隷商人みたいなもんじゃないですか」

「誰が奴隷アルか!
頭ブチ抜いて殺したろか!!」


当然 神楽ちゃんは怒った。


「この程度の小娘 真選組(てめーら)で処理できるだろ
厄介でメンドくせぇもん持ち込んでくるんじゃねーよ」

「こんな雑魚に構ってる暇なんかねーや
真選組(うち)は万事屋(おたく)と違って忙しいんです」


忙しいのは事実だ。


「殺人集団が偉そうに
テロリストだけじゃなく罪のない一般市民まで手にかけてんだから さぞ忙しいんでしょうね」


小娘 小娘言われていた霧江(きりえ)さんの発言…

無差別殺人集団みたいな言われ方。


「霧江さん…のお父上って攘夷浪士だったんですか」


聴きにくそうに新八君が聴く。


「いいえ、父は一般市民です
なんの罪もない。

父は真選組と攘夷浪士の乱戦に巻き込まれて この男に斬られたんです」


「…って言ってるよ沖田君」

「知りゃしませんよ」

「とぼけるな 父の…六角宗春(ろっかく むねはる)の名を忘れたとは言わせない!」


六角ねえ…六角 六角……
どこかで………あ、思い出した
資料室にあったファイルの背表紙で見たんだった。

 
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