□冥姫 第三十七話
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「なんですかこれ」


差し出した茶封筒を見ての第一声。

当然の問いだ、俺も立場が逆ならそう言う。


「トッシーの忘れ物だ
中 見てみろ」


宮中が中の写真を取り出すのを息を殺して見つめる
無意識のうちに緊張していたらしい。


「……ああ、これ」


独り言をポツリとつぶやき写真を見ていく。


一通り写真を確認すると視線を俺に向けた。


「これ トッシーの隠し撮り写真ですね」

「知ってたのか」

「はい、だって隠れてても気配は消せてないですからね」


宮中があまりに穏やかに答える

なぜそんなに穏やかなのか釈然(しゃくぜん)としない、

釈然は疑問に変わる。


「嫌悪感はねえのか」

「ないです、了承を得てからにしてって言ったらしてくれましたし」


心なしか声が弾んでいる。


「嬉しそうだな」

「思いがけずトッシーと再開したような気分です

土方さんは怒るかもしれませんけどトッシーは私にとって友達です」


曇りない瞳が真実だと俺に告(つ)げる。


「別に怒ったりしねえよ、
それよりこの写真どうすんだ」

「机の奥にでも入れておきます」


そうなるよな
自分の隠し撮りをアルバムにしまう奴なんて聞いたことねーし

それ以前にアルバム持ってないだろうし。


「わざわざありがとうございました」


微笑む宮中。


「ああ」


宮中の笑顔に微(かす)かとは言え苛立ったのはこれが初めてだ。


隠された俺の苛立ちに気付くこともなく
宮中は封筒を胸に部屋を出ていった。


トッシーに嫉妬する日がくるとは夢にも思わなかったぜ。


苛立ちの正体に自分でも呆れる。


宮中の写真…
ちょっと惜しかった気が今になって大きくなってきた。


もし俺がお前の写真をくれと言ったらどんな反応をするだろう?


なんの疑問も持たずにくれるだろうか?

それとも

疑問に思って理由を聞いてくるだろうか?


たぶん…後者だろうな。


『はい、構いませんよ どうぞ』


微笑みながら写真を差し出す宮中。

そんな宮中を見られるのはまだ先のようだ。


早くあいつの心を読めるようになりてェな。





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