□冥姫 第三十六話
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囚人番号三−二五三○五


過激攘夷派 暁(あかつき)党の幹部

田中古兵衛(たなかこへえ)
別名 人斬り古兵衛。


幕府の役人三十五人を殺害した凶悪犯罪者。


幕吏(ばくり)四十人以上に包囲され、全身十数ヶ所の刀傷を負うも 怯むどころか顔色一つ変えず応戦し七人を殺害。


捕縛後も尋問 拷問にも動じず沈黙し続けている。


沈黙と言っても口は開いている
奴はどんな拷問の中にあっても楽しそうな笑顔を絶やすことはない。


近藤さんの説明を聞きながらマジックミラー越しに見た田中古兵衛は確かに笑っている。


隣では土方さん沖田さん山崎さんもマジックミラー越しに見ている。


「面倒な奴を寄こしたもんだ」


土方さんがごちた。


「暁党が大規模なテロを画策しているとの情報が入っている
奴が情報を握っているのは間違いないだろう」


なるほどね、それで屯所に運ばれてきたのか。


「それを真選組(俺たち)に吐かせろと?」

「そういうことだ やれるかね」

「難しいでしょうね
今までどんな拷問をうけても笑ってたんでしょう?」

「美月ちゃんの言うとおりでさァ
拷問で吐かせるのは無理でしょう
見てくだせえ あのドMヅラ」


相変わらず笑っている。


「拷問の訓練をうけていますね
痛みで口を割らせるのは無理でしょう」


まあ、山崎さんが言うとおりだろうな。


「痛みでは無理…か
どうしたもんかねトシ」

「攻めるだけが取り調べじゃねえ
アメとムチを使って奴に心のスキを作るんだ
吐かせるんじゃない、こちらから近づき情報をかすめとれ」


奴が心理戦に長けていないことを願おう。


「近づくったってあんな奴クラスが同じで席が隣でも友達になれるタイプじゃないですよ」

「山崎さん顔色がよくないですね 大丈夫ですか」

「大丈夫だ 卒業前は嫌な奴ほどいい奴に見える」


近藤さんの言う大丈夫は私との論点がずれている。


「友達つくるチャンスですぜ土方さん
休み時間ずっと机につっぷしたまま学園生活終えるんですか」

「人をさびしい奴みたいに言うな」

「皆のテンションあがる身体測定のときが狙い目です
‘お前もブリーフ派?俺もだよ’みたいなノリでいってみなさいよ」


沖田さん 友達のつくりかたを教える先生みたいだな。


「誰がブリーフ派だ」

 
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