□冥姫 第三十五話
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沖田さんはアイマスクをずらして起き上がった。


「同じ好奇心なら土方さんじゃなくて俺でもいいんだろ?
俺にしときなせェ
新たな発見が見つかるぜ」


つまり俺を視ろ!と?


「沖田さんはナルシストじゃなかったですよね」

「まるで今はナルシストみたいな言いかただねィ」

「違うんですか?」

「解釈の相違(そうい)だ」

「それはすみませんでした」

「で、俺のこと視てくれるのかい」

「ときどき視ます」

「今はそれでもいいか。
んじゃちょっくら見回りに行ってくる」

「はい 気をつけてくださいね」


手を振る沖田さんの後ろ姿を見送った。


まさか視ろと言われるとはね。

沖田さんはサボるために姿が見えないときが多いから
気がついたときに見ればいいか。



翌日

今日は一人で見回り。


土方さんがいないかな なんて無意識に思ったりして内心で苦笑した。


「美月ちゃん」


ぎこちない笑顔の山崎さんがいた。


「山崎さん、偶然ですね」


見回り中に会うのは久しぶりだ。


「せっかく偶然に出会えたんだからさ、ちょっとお茶でも飲んでかない?」

「いいですね」





「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」


公園のベンチに座って山崎さんに買ってもらった缶ジュースを一口飲む。


「あのさ…美月ちゃんに聴きたいことがあるんだ」

「なんですか?」


真剣さと深刻さとを混ぜた表情の山崎さん、

自然と私の表情も引き締まる。


「いつからかは分からないんだけど副長のこと視てるよね」

「見てますよ」

「好き‥なの?」


…山崎さんの雰囲気から察するに恋をしてる意味の好きなのかな?


もしそうなら不本意な誤解が生じている。


「美月ちゃん?」


急に黙った私を訝(いぶか)しく思ったようだ。


「ごめんなさい、あまりに予想とかけ離れてる内容だったので」

「言いたくないならいいんだ」

「いえ、そういう訳じゃないんです」


沖田さんにしたように理由を説明した。


「そうだったんだ!
勘違いしてごめんね」


質問したときの深刻さ等は嘘のようにニコニコと笑んでいる

しかも晴れやかささえ覗かせる。

言うなれば爽やかな笑顔。


「今 言ったこと土方さんには言わないでくださいね」


山崎さんは真選組内の監察もしていて何かあれば土方さんに報告する任も請け負っている。


「言わないよ」

 
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