□冥姫 第三十五話
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私はどうしたんだろう?


どうして心がざわめくの?


恋してるわけでもないのに。


その証拠にもし今 兄上がいるなら、迷わず兄上の手をとるよ。








困ったなぁ、表面意識なら答えが容易に解っただろうけどこれは深層意識の領域だ。


深層意識は私の一部で意識の根底(こんてい)にあり
意識のある無意識みたいなモノ。


要約すると考えても容易には答えは出ないということ。



‐‐‐



あの日から解決の糸口があるかもしれないと土方さんをよく視るようになった。


私の視線に気がつくのか、よく目が合うんだよね

でも、目とか合っちゃうとゆっくりじっくり視れないじゃない?


あーあ、千里眼でもあればなぁ。

どうしたものか。





たまに視線を感じ、見ると宮中が俺を見ているというのが増えた。


他にも遠目から宮中を見ているとキョロキョロしたあと俺のほうを見るのが増えた。


目が合うとあいつは淡く微笑んで視線を戻す。


前はこんなことはなかった。


もしかしたら俺の視線に気がつくようになって なんで自分を見てるのかと、俺を見てんのかもしれねェな。


俺は宮中が気がつくほど強い視線を送っていたのだろうか、

それとも鍛練を怠らない宮中の腕があがって視線に気がつくようになったのか?


しかし俺が宮中に気がついてないとき、宮中が俺を見ているのも紛(まぎ)れもない真実だ


普通なら喜ぶことなんだろう。


だが喜べない
何故なら あいつの俺を見る目は不思議なモノを観るような目なんだよ

観察と言ってもいい。


まさか俺の気持ちに気がついたとか……

…あいつに限っては絶対ないな。


ちったァあいつを見るのを自重するべきなのか

無意識に見ちまうからな
自重できるのか?俺は。





「土方さん 書類を持ってきました」

「ああ」


目と目が合う。


私の心の安穏(あんのん)のため思い切って聴いてみよう。


「突然ですけど
お通ちゃんのこと好きですか?」

「ホントに突然だな
お通はトッシーを成仏させるためであって、大した興味はない」


土方さんに恋していたらきっと今の答えを聴いて心が晴れていくんだろうな…。


心は相変わらずざわめいて今の答えを聴いても
『はあ、そーですか』くらいしか思えない。





部屋で今日も考えていた。


嫉妬‥とも違う

クマのぬいぐるみを独り占めしたい子供の独占欲?

独り占めしたいほどの執着心などない。

 
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