□冥姫 第三十四話
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妖刀 村麻紗(むらましゃ)


この刀を手にした者は引きこもりの怨念にとり憑かれ
二次元好きの腰抜けになる。


現在の所持者、土方十四郎。







「美月ちゃん」

「何?トッシー」

「一緒に写真を撮ってほしいんだけど…いいかな」


いつ頃からか忘れたけど
なぜか私を隠し撮りするトッシーに写真は了承を得てからにしてと言って以来
こうやってちょくちょく言ってくるようになった。


「いいよ一枚くらい」

「ホント!?やったァ!」


ツーショットで写真を撮る。


「焼き増しして美月ちゃんにもあげるね」

「ありがとう」


トッシーはスキップしながらどこかに行った。



在りし日に叩き折ってやろうと思っていたのも今は昔。

トッシーは私にとって憎めない人(?)になっていた。


わりとお喋りもしたりしてある種 友人のようだと思っている。


まあ…土方さんにしてみれば、ふざけんなっ!ってとこだろうけど。


以前 土方さんはトッシーでありトッシーは土方さんだった。


しかし土方さんはそれを良しとせず、トッシーを別人格として引き剥がすと意識の奥底に封じ込めた

いつか消えるだろうと踏んで。


それで消えるなら村麻紗が妖刀になることなどなかっただろう、

いつまで立ってもトッシーが消えることはなく、それどころか隙あらば身体を奪い取ろうとしている。


だからたまに奪い取られてトッシーになっているのだ。


なぜ私がこのことを知っているかと言うと土方さんが教えてくれたから、
要約すると
『トッシーは俺じゃないから誤解するなよ』ってね。


言ってみれば今の土方さんは二重人格者みたいなもので土方さんはトッシーのときの記憶を持たない。



ある日の夜
トッシーが私の部屋に来た。


「美月ちゃん この前の写真でござる」


焼き増しした写真をくれた。


「わざわざありがとう」


トッシーがモジモジしている。


「どうかした?」

「僕 女の子の部屋に入ったことないから…
…じゃなくて!
美月ちゃんに質問があるんだ」

「質問?」

「              」


トッシーの質問を聞いて私はこう答えた。


「そうだねぇ…いつか教えてあげる」

「いつかっていつ?」

「いつかはいつかだよ」


トッシーの頬がプクっと膨らんだ。





近ごろトッシーを見ないなあ、と思っていたら土方さんに呼び止められた。


「宮中、聞いてほしいことがある」

「なんでしょうか」

「俺はオタク道を極め、オタク達の頂点に立つ
オタクの覇王になる」


理由を聞くと
トッシーと話し合った結果、自分が生きた証がほしい
そう言ったそうだ。


「奴を成仏させるため俺は進む
人々の心に奴のことを刻み込んでやる

お前にはこのことを知っていてほしい」

「はい」


私に宣言することによって決意を固めたかったんだろう。

 
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