□冥姫 第三十三話
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これでお礼回りは終了。


まだ夕方まで少し時間があるので見回りしながら屯所に帰ることにした。



あちこち歩き回っているうちに太陽はすっかり西に傾いて陽の色を変えている。



ここを見たら帰ろうと入った薄暗い路地裏、

いつもと変わらないはずなのに何かが違う気がする。


逢魔が時(おうまがとき)だから?


立ち止まり周囲を見回しているときだった。


「こんなところに女の子一人だと危ないよ」


声がしたほうを見ると頭と顔に布を巻いた人がいた

声から察するに男だろう。


「ご忠告どうも」

「そんなに警戒しなくても何もしないよ」

「お兄さんみたいに顔を隠した人がいたら警戒もするでしょう」

「それもそうか」

「お兄さんは殺し屋さん?」

「酷いなァ俺が殺し屋に見える?」

「今 お兄さんが鏡を見たら怪しい人が映るよ」

「生憎だけど女を殺す趣味はない」


いまいち真意が見えない。


男が一瞬で間合いを詰めて私の顔を覗き込む。


「ふ〜ん」


私は気を抜いてはいなかったのに。


「あなた誰?」


目つきを鋭くさせた。


「聞いたことがあるよ、冥姫のこと
どのくらい強いか興味があったけど…予想以上で嬉しいよ」

「質問に答えなさい」


男が顔に巻いた布を取り払うと笑顔を貼りつけたような顔が表れた。


「俺は神威、ねェ君ってさ
まだ何か潜んでるよね」

「なんのことかしら」

「君の本当の強さはこんなもんじゃないでしょ」


目つきを元に戻し私も笑顔を貼りつける。


「言ってる意味がよく分からない」


男は背を向け


「地球は面白いところだね
強い人間は好きだよ、またね」


それだけを言い残し消えて行った。


なんだったんだ?
よく分からないけど あんまり知り合いにならないほうがよさそう。


…そうそう会うこともないか。



「やあ、また会ったね」


昨日の今日で会うとは思わなかった。


笑顔を貼りつけた男に対抗するように私も笑顔を貼りつける。


「なんでいるの?」

「またねって言ったの聞こえてなかった?」

「聞こえたよ」

「君はなんで昨日と同じ場所…
ここにいるの?
俺に会いたくてきたんじゃないの?」

「まさか」


その反対だ。

私は会いたくてここに来たんじゃない

ここに居ないことを確認するためにきたのだ。


結果的にはここにまた居て遭ってしまったけど。


「俺は君に会いたくてここにきたよ」

「ふーん」

「嬉しくない?」

「うん 嬉しくない。
それよりなんで私に会いにきたの?」

 
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