□冥姫 第三十二話
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戸惑いよりも腹が立ってきた。


この酔っ払い!!と心の中で叫びながら一撃決めて眠らせると、急いで自室に戻って感触を消すようにゴシゴシと首を擦った。


翌朝

二日酔いの皆さん。

土方さんも例に漏れず二日酔い。

探りをいれて昨日の記憶があるか聴いてみた。


「飲み比べしてた途中まではあるんだが…
俺なんかしたか?」

「いいえ」


まあ酔っ払いがしたことだし、ワンコが首に鼻を擦りよせてきたと思って忘れよう。


忘れることにしたのはいいが私には色気がない

その自覚は十二分にある。

そんな私に酔っていたとは言え、ああいうことをするとは

…やっぱり土方さんも男性だったんだなぁと、へんに再認識した。


もちろん性別が男性なのは分かり切っていたよ?

ちょっと違う意味で男性なんだなぁと再認識したのだ。

人類学的に男性がそうなのは知っている。

今は特別仕事が忙しいわけでもないのに、女性のところに行ってないのだろうか?


土方さんなら女性に不自由はしないはず、
仮に特定の相手がいなくても玄人のお姉さんのとこに行けばいい。


何か行けない理由があるのかな?

………まさかとは思うけど
…私が…いるから?

一つ そう推測するに至ることがあった。


ちょっと前にトッシーから土方さんに戻ったときのこと
トッシーが買ったHな本が畳に散乱していて片づけるため土方さんはそれを拾い集めていた。

そこに書類を持ってきた私が偶然出くわしてしまい
土方さんはすっごく焦っていた。


「ち、ち、ち、ちち違う!
これはあれで俺じゃない!本当だ!」

「はい 分かっ―――」

「俺はこんな本 興味ないから!俺をそんな軽蔑の目で見るなァァ」


目はいつもと変わらない
焦りすぎで被害妄想がでている。


「俺が興味あるのは…剣、そう!剣のことだけだから!
わかったら出ていけ!」


部屋から追い出された。


あのときは書類どうしようとしか思わなかったけど

剣しか興味ないとか言った相手が周りでウロチョロしてたら行きにくいよね、

しかも被害妄想で私が軽蔑の眼差しを向けたと思い込んでるし。


どうしよう
推測だったけど妙に合点(がてん)がいく

真実はそうなのかもしれない、
いや絶対そうだ!


東城さんみたいにあからさまなのは引くけど、お互い合意の上で私の知らないところでやるなら全然気にしないんだけどなぁ。

だからって、私は気にしないから女性のところに行ってください、なんて言えるわけないし…。


二日間 さりげなく言うにはどうすればいいのか考えすぎて煮詰まってきたので、ケーキでも食べて気晴らししようとケーキを買った。

土方さんがケーキを弾き飛ばして堪忍袋の緒(お)が切れた
緒を切ったのは並んだ合計時間だ

でも堪忍袋から溢れた思いは今一番考えていることだった。


「…ひ、ひ、土方さんのバカ!
意外と甲斐性なし!

中略

しばらく家出します!
捜さないでください!!」


捨て台詞は完結に解りやすく。


回想終了。

 
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