□冥姫 第三十話
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「その美月さんが困ってここに来たのに、お前ら嬉しそうだな」

「バっカ おめー新八、
だからお前はメガネなんだ
美月ちゃんがお泊りするんだぞ!?」

「そうだぞ新八
美月ちゃんがお泊りするんだぞ」


神楽ちゃんが坂田さんをマネた。


「メガネかんけーないだろ!」


なんか…依頼ぬきで歓迎されてる?

なら私は幸せ者だ。

母上が言ってた、
自分の来訪を歓迎してくれる場所がある人は幸せなんだって。

だから私は幸せ者だ。

その証拠に顔と心が綻(ほころ)んでくる。


「ホント可愛くおねだりとかされたら何でも買っちゃうね、俺は」


私を和(なご)まそうと坂田さんが冗談を言う。


和やかな空気が流れていたのに携帯の呼び出し音が空気を振動させて空気を塗り替えた。


ディスプレイを見なくても誰からなんて かけ算の一の段より簡単に解る。

ディスプレイには分かり切った土方さんという文字が表示されていた。


携帯の通話ボタンを押して電話にでる。


「現在この電話番号は使われておりますが 話すことはありません
しばらくしてからおかけ直しください」


ボタンを押して電話を切り 続け様に電源を切った

これでよし。


「美月さん あんなこと言って本当によかったんですか」

「いいの ああいう憎まれ口をたたいておけば憎たらしくて捜す気とか少しは失せるでしょ」


本当に‥捜してくれなくていい

捜すよりこの気持ちを察してほしい。


「美月ちゃんのお願いは匿ってほしいだったよな」

「はい」

「その願い、正式に聞き入れた
俺が真選組の奴らから守ってやる」

「銀ちゃんばっかりカッコつけてずるいアル、
私だって美月ちゃんを守るネ」

「僕も美月さんのこと守ります」


嬉しくて微笑んだ。


「ありがとうございます
この年になって守ってもらうことになるなんて思いもしませんでしたけどね」


いつも私は護る側だった、
これからもそうなんだろうと漠然と思っていた。


「ワンッ」


定春が顔をすり寄せる。


「定春もありがとう」

「美月ちゃん今日は一緒にお風呂に入って背中洗いっこしよーネ」

「うん、洗いっこしよ」

「そのあとは俺と一緒にお風呂入ってね」


二度風呂?
し○かちゃんじゃあるまいし。


「それで今日は隣で寝ようネ」

「うん 布団並べて寝よう」

「そのあとは俺の隣で布団並べて寝てね」


寝たあとに寝るってどういう状況?


「銀さん、非番とは言え美月さんは警察なんだから現行犯で逮捕されるようなことはしないでくださいよ」

「新八 心配することないネ
私が美月ちゃんを守るアル」

「ワン」

「定春も守るって言ってるヨ」

「神楽ちゃんと定春が守ってくれるなら安心だね」


言って新八君は安心したように笑った。

 
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