□冥姫 第五十六話
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そういや…
俺達の中でお前に惚れてる奴がいたらどうするって聞いたとき、あり得ないとかも言ってたな

ありえない、つまり有り得ることがない、考えられない

だから選択肢として入ることさえない

無意識に除外される。

まさに、ありえない。


………今、宮中が鈍い理由が分かった気がする。


「トシ?」


何も言わなず考え込んでいた俺を訝しんで声をかけてきた。


「ちょっと考え事をしてた」


そうか、と言って言葉を続ける


「あとなぁ…美月ちゃん…真選組を辞めたいって言ってた」


なんの冗談だ?





朝の隊長会議、たいした変わりもなく淡々と進む。


私の部屋の机の引き出しには、昨日書いた辞表が入っている

あとで近藤さんに渡すつもりだ。


「以上だ、宮中は俺の部屋にこい」


問題なく終わったと思ったのに…土方さんに呼ばれた。



「…どういうことだ」


座るように促されたあと、開口一番に言われた。


「なにがですか」


軽く睨まれる。


「真選組を辞めたいそうだな」

「はい…」

「俺のセクハラが原因らしいな」


近藤さんに口止めするの忘れてた。


「………」

「あのなァ、俺がセクハラするわけねェだろ」


まさか無自覚?それともシラをきっている?


「……一応言っておくが、無自覚でもシラをきっているわけでもないからな」


心の質問に答えられて驚く。


「なんで分かったのかって顔だな
今と同じで顔に出てた」


両手で頬を挟んだ。


「私そんなに分かりやすいですか?」


余裕はいまだに戻ってない。


「前よりは分かりやすいな
それに俺がどれだけお前を見てきたと思ってんだ」


そんなに気にかけてくれていたのか、さすがフォローの達人。


これ以上、俺のセクハラが元で辞めるなんて言われちゃ敵わねェと前置きして息を一つ吐いた。


「美月」


体かピクッとする。


「まだわかんねェか」


何がなんやら。


「お前が好きだ」


一瞬真っ白になった頭はすぐに働き出し、勘違いを起こしそうなことをいってきたと理解した。


「っ、私も好きですよ」

「予想どおりだな」

「?」

「愛している、美月」


……………………………………………………………………………………は?

あ、い?して?い、る?


思考停止したけど、数秒ほどすると頭の片隅で冷静に考えだした

なんで土方さんに愛しているって言われたんだろう?


私のことなんて愛してないのに。

 
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