□冥姫 第五十六話
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あの日から沖田さんと会う機会が減った。

タイミングがずらされているんだと思う

慰めを遠慮したから。


でも励ましは受け取った、だから単純に元気になりたい。



なりたいんだけど……


「あら美月ちゃん、こんにちは」


見回り中、お妙さんに出会った。


「こんにちは、お妙さん」


お妙さんは美人だ
どことなく品があり、優しいが凛としている。


近藤さんがベタぼれになるのも分かるよ

土方さんも………。


「なんだか元気がないみたいだけど大丈夫?」

「大丈夫です、ごめんなさい見回りの途中なので、これで失礼します」

「そう……くれぐれも無理はしないでね」


少し心配顔をしながらも追求してこない気遣いに安堵して、その場を離れた。



翌日
屯所の廊下で視線を感じて辺りを見回す

とたんに視線を感じなくなった。

気のせいということはないが、気にしないことにした。



変わらない日常が過ぎている

心も変わらず、いつまでたっても凪いでくれない。

視線も…たまに感じる。


最近では本当に土方さんから距離をとるため、真選組を辞めようかと考えるようになった。


でも傍にいたいという思いもあって困っている。



ある日フッと気がついた

傍にいたいってなに!?

それこそ私が捨てたいと思った想いじゃない!

これでは想いにすがっているみたいだ。


自分の両頬をバチンっと叩いた。

痛いし頬が熱い、気合いを入れるためだから仕方ない。


いつもの足取りで局長室に向かったが近藤さんはいなかった

またストーカーに行っているのだろう。

すかさず支給されている携帯で電話を掛けると、数コールで繋がった。


「はい、もしもし」

「近藤さん、宮中です、大切な話があるので戻ってきてもらえませんか」

「分かった、今すぐ帰るよ」


程なくして近藤さんは戻ってきた。


「近藤さん、私 真選組をやめようと思っています」


局長室で膝を向かい合わせ、まっすぐ近藤さんの目を見ながら話した。


「……………………………………………………は?」

「私、真選組をやめようと思っています」

「…………………………………………は?」

「ですから───」

「えええええ!!」


急に叫ぶからビックリした。


「な・な・なんで?確かに真選組はヤローばっかりで、女の子の美月ちゃんは気苦労や不満があると思う、いや あるんだろう!でもだからって…そんな急に……」


予想よりすごく驚かれた。

 
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