□冥姫 第五十四話
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なんとか子供扱いされたのを怒っている感じにできたかな

怒ったとき顔が赤くなることは普通にあるよ、うん。


でも………どうしよう………言ったことは嘘ではなかった

嫌だった、子供扱いされるのが。

前は子供扱いされて安心してたのに……。


自分でも薄々気がついていた

でも気がついていることをなんとか誤魔化そうとしていた

土方さんがお妙さんを想っていると知った日から考えていたことは、誤魔化しを正当化できる材料、または納得する理由

だけど誤魔化しに答えなんかない

正当化できる材料も納得する理由も存在しない。


もう諦めよう、誤魔化しきれないよ


……私は…土方さんが……………好きだった。


思わず項垂れる
自分のバカさと滑稽さと鈍さに打ちのめされた。

本当に失恋してから気がつくなんて………。


今 唐突に解った、朝の道場の疑問の答え

あの日から土方さんは別の意味で男性だと思った
あの時から土方さんは私にとって男性だった。

そう、私にとって土方さんだけが男性だった。


涙が滲(にじ)む。


土方さんをそんな目で見ていたなんて、油断した。

私は心変わりしないと思った
心変わりしたくなかった

したくなかったのに油断した
兄上以外に恋をするなんてあり得ないと思って油断した

あり得ないと思っていたのに……。


本当に気がつかなかったよ、失恋するまで。


ああ 今 心底思う、失恋したのが今でよかった

少し時間はかかるだろうけど、きっと大丈夫になる


諦められるし、忘れられる。





宮中が怒った。

子供扱いするなと怒った。

今まではなんともなかったのに頭を撫でたら顔を真っ赤にして怒った

だが俺は確かに見た
宮中の耳が赤くなったのを。

それに顔を真っ赤にするほど怒ったわりにはあまり怒気を感じなかった。


……………少し距離を詰めて、様子を見てみるか。





→後書き
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