□冥姫 第五十四話
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私の手から顔を放したので諦めたかと思ったら、首の横に顔が埋まり、首に唇と思う感触がした。


飛び起きて、夢だったことを確認する。

普通なら変な夢を見た、で済ますが
あのときと同じ、感触を消すようにゴシゴシと首を擦った。


なんで私はこんな思い出すような夢を……?

酔っ払いがしたことだし、ワンコが首に鼻を擦りよせてきたと思って忘れよう

そう思って、忘れていたのに………思い出してしまった。


最悪だ。



今日は午後から隊長会議なので出席しないといけないなんか疲れた思い出したくなかったあの書類の期限は明日だっけ明後日だっけ昨日だっけ昨日はあり得ない悪夢と言っていい明日は見回りだっけ違ったっけまた忘れられるだろうかワンコなら本当にワンコがよかった


頭を振って考えを追い出した

頭がおかしい。


雑念を払うため、私は道場で竹刀を振るうことにした。


早朝の道場はシンと静まって私の思考も落ち着いてくる。


夢を追い払うように素振りをしていたはずなのに、ふと思い出した

あの出来事のあと土方さんのことを違う意味で男性だと再認識したんだっけ。


ふと、あれ?と思った

何かが引っ掛かる

何かが……………………………………………


首に触れられて、私に色気はなくて、男性は好きな人じゃなくても抱くことができることは知っている。


腹がたって、眠ってもらって、首を擦った

思い出していたら感触まで思い出して、またゴシゴシと首を擦った
しかも今回はなかなか消えない

なんでか分からないけど、頬が熱を持つ


何でか分からないけど、今ここに誰もいなくてよかったと思って、何で誰もいなくてよかったと思ったのか分からなくて更に悩んだ。



午前中の仕事はまったく はかどらなかった。


午後になり、隊長会議の行われる会議室で指定された座布団に座る。
早めに来たからか隊長さん達は疎(まばら)らだ。


土方さんはもう来ていて座っているんだけど

………………なんか土方さんキラキラしてない?


自分でも信じられないけど、してる!本当にキラキラしてる。

目を擦って再度みたらキラキラは消えていた。


キラキラは瞳孔が開いていてキラキラして見えるらしい。

瞳孔?私の瞳孔開いてた?


「どうした」


私が見てるのが気になったのか、不思議そうに尋(たず)ねてきた。


土方さんがキラキラして見えてました、
なんて言えるわけない。


またキラキラしてきた。


「あのっ!私の瞳孔開いてますか!?」

「は?瞳孔?」

「はい、瞳孔です、開いてますか?」


土方さんが私の目を覗きこみながら顔を近づけた。

 
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