長い夢

□冥姫 第二十三話
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「その夫婦 何者だ?」

「調査してみましたが怪しいところは一切ありませんでした」

「土方さん こいつが攘夷派ってことは考えられませんかねェ」


隊長が涼夜の写真をペラペラと振る。


「正体が解らないかぎり可能性はあるな、引き続き調査してこい」

「はい」





涼夜はいつも万事屋の旦那と同じように腰に木刀をさしていて、美月ちゃんと会わない日は夫婦の手伝いや話しをし、時間が空くと散歩をしたり読書をしたりしている。



今日は散歩か…。

気配を消し 一定の距離を保ちつつ 後を付けた。


不意に涼夜が路地裏に入って行く。

怪しい。

尾行を続ける


角を曲がったので角から様子をうかがうと涼夜は消えていた。

焦って辺りを見回した瞬間 黒い影のようなものが目の端に映る。


「動くな」


喉元に当てられた木刀。


「木刀と思って安心するな、首の骨くらい木刀でどうとでもなる
俺がいいと言うまで動くな」


殺気がこの行動が冗談ではないことを物語る。


「四日前からコソコソかぎ回ってたのはお前か、何が目的だ」

「………」


「ふん、黙(だんま)りか
一般人に変装しているがお前 大方真選組の関係者だろ
監察ってところか」


身元があっさりバレた。


「お前みたいに目立たない野郎は諜報活動してる可能性が高いからな」


その観察眼から涼夜が一般市民でないことは分かった。


「真選組が何を探る?と言っても俺と真選組の接点は宮中美月以外無い、
何が聞きたいんだ?」

「お前は何者だ」

「攘夷に組する者ではないとは言っておこう」

「信用できるか」


木刀が外された。


「そんなことより俺と美月の関係が知りたいんだろ?
教えてやるよ」


涼夜は人の悪い笑みを浮かべた。





「涼夜と美月ちゃんはお互い想い合った恋人同士だそうです」


俺は涼夜から聞いた話を報告している。


「なんでも結婚を誓い合った仲だとか」

「攘夷派の線はどうだった?」

「本人は否定してました」

「山崎 何が何でも攘夷派である証拠を掴んでこい」

「土方さんそんな まどろっこしいことせずに叩っ斬りやしょうぜ」

「そうしたいところだが斬ったあと濡れ衣だと宮中が知ったらややこしいだろ」

「やっぱり美月ちゃんに聞くのがいいと思うんですけど」


やましいことがないなら教えてくれると思う。


「本末転倒だが情報が得られないならしかたねェ
山崎 宮中 連れてこい」

「はい」





山崎さんに連れられて土方さんの部屋にくると
真面目な面持ちの土方さんと沖田さんがいた。


「聴きたいことってなんですか」

「お前最近 涼夜って男と会ってるだろ」

「ご存じでしたか」


人目のつくとこで会ったりしてるからな。


「そいつ攘夷派じゃねェだろうな」


キョトンとしてしまう。


「絶対ありえないです
これは私がひいき目なしで保障します」

「それならいいが」


なんで二人とも残念そうにしてんの?

 
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