長い夢

□冥姫 第二十三話
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楽しい時間はどうしてこうも早くすぎるのだろう

夕焼けが辺りを染めている。


「涼夜 しばらくはこっちにいるんだよね」

「その予定だよ」

「時間が空いたときに会いに行っていい?」

「もちろん」

「じゃあまたね」

「うん」


浮かれ気分で屯所に戻るとやけに静かだった。

もしや緊急出動があったのかと思ったけどそうではないみたい
それに遇う人 遇う人、悲しそうなモノ言いたげな目で見てくる。


何?なんなの?


「…美月ちゃん」

「こ、近藤さん」


いつのまにか幽霊のように背後にヌっと立っていて びっくりした。


「悔しいが美月ちゃんがいいなら俺に言うことはない、だが
ムラムラはいかんぞ」

「はい?」


話の真意が見えてこない。


言いたいことを言うと肩を落とし気味で去っていく。


結局ムラムラはするなってことでいいのだろうか。


廊下で悩んでいても仕方ないので部屋に戻る、
夕食は済ませてきたので食べず早めに布団に入った。



翌朝の会議はいつもと変わらなかった、
と言いたいところだけど何かが違う

違和感を感じながらも淡々と進み会議は終了。



朝食後は一日書類整理、
昨日休んだ分だけ溜まっている。



夕方近く
できた書類を纏めて土方さんに渡しに行った。


「土方さん書類もってきました」

「ごくろーさん」


またあの眼差し…私の恋話を聴きたがってたときと同じ、何か聴きたそうな眼差しで見られた。


?なんなんだろう。





深夜

俺 山崎退は密命を受け、ある人物を調査していた。


取り敢えず分かったことを報告するため屯所に戻る。


「副長」

「入れ」

「で、どうだった」

「名前は涼夜
これが涼夜です」


一枚の写真を取り出した。

副長と沖田隊長は鋭い眼光で写真を見つめる。


「女ウケよさそうな容姿だな、
年は?」

「調査中です」


隊長は涼夜の写真を無言で凝視している。


「現在はこの初老の夫婦のところに居候中のようです」


二人とも夫婦の写真はさして興味がなさそうに眺める。


「こいつが何者なのか徹底的に洗え!」

「はい」





それから俺は毎日 涼夜の動向や正体を探った。

ただし美月ちゃんと一緒にいるときはあんまり近づくと美月ちゃんに気づかれる可能性がある

だから美月ちゃんとの会話の内容は気になるが一度も聞き取れたことはなかった。

ときに美月ちゃんとの仲良しっぷりに腹を立てたり
凹んだりもしたが探り続けた。





「で?」

「いや、ですからね
解らないんです」

「テメー四日も張りついて収穫なしとはどういうことだ?
なめてんのか!?
切腹したいなら、介錯は俺がしてやる」


刀を抜く副長。


「なめてないです!」

「サボってたとしか思えないねィ」


バズーカを抱える隊長。


「サボってもないです!」

「どーゆーことか説明してみろ」

「しますから刀を突き付けるのはやめてください…」

「いーから早く言えや
腹切る前に介錯されてェのか」

「洗っても何も出てこなかったんです!
不自然なくらい何も解らないんです

あの初老の夫婦も平凡に見えて中々の食わせモノで、さりげに探りを入れてみたんですけど うまくはぐらかされて何も聞き出せませんでした」

 
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