長い夢

□冥姫 第二十二話
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“会わせてくださいお姉さんに
あっごめんなさい突然こんなこと書いてキレイ事ばっかり並べて

…本当は僕そんなたいそうな人間じゃないんです

だって僕 本当はただただ君に会いたいだけだから”

「こいつを消して完成だ」


君に会いたいだけだからを白い墨で消した。


「ま、まさか消したところは新八君のようなウブな少年には照れて書けない一文」

「書いたあと照れて消したと演出するために!?」

「新八君までフォローするとは!
トシ お前はどこまでフォローできるんだ!
まさに完璧…完璧だァァァ!!」


「「「これがフォロ方十四フォロー!!」」」


ずっと静観してたけど確かに凄い
書いた本人も得意気だ。


「至急送れ」

「ありがとうございます」


新八君は手紙を持って走っていった。


「おめーら礼は言わねーぞ」

「分かってるさ」

「男なら一度は通る道だろ」


さっぱり解らない。


「どーだ宮中 俺の手紙は」

「凄かったです、違う意味で見直しました」

「違う意味ってなんだ」

「この先もし土方さんから手紙を貰うようなことがあったら、
まず疑ってかかります」


文章ならなんとでも書けるというのを目の当たりにした私の感想。


「待て!それは誤解だフォローさせてくれ!!
…あ、やべ」

「どうかしましたか」

「ムラムラします
消し忘れた」


………。



返事が返ってきた。

責任をなすり付けあう大人三人をよそに


「やりました!うららちゃん僕と会いたいって!」

「よかったね」

『『『マジでか!?』』』


三人の心の声が聞こえた気がした。





数日後の夜

私は土方さんと近藤さんとパトカーで見回りをしている。


「今日だろ、新八君が例の娘と会うの」

「覚えてねーよ」


そういえばそうだった。


「うまくいってるといいな」

「そうですね」

「総悟の姿が見当たらねェから失敗したと見たな」


土方さんの台詞で新八君が自分だと送った写真は沖田さんが新八君だと勘違いする写真だったことを思い出す。



いきなりパトカーの前に眼鏡をかけた三つ編みの女性が飛び出し 土方さんが急ブレーキをかけた。

ブレーキが間に合って事なきを得たが、女性は逃げるように走っていってしまった。

土方さんと近藤さんは車から下りて女性が走っていったほうを見つめる。


ザザザと足音のような音が聞こえてきた。


「「おわアアァァァ!!」」


な、何事!?


ガシャアア

フロントガラスを蹴破り女の子が乗り込んできた、

攘夷の者かと緊張が走ったが沖田さんに頼まれて(?)車を強奪したらしい。

この子 うららちゃんじゃない?

なんで首輪してんだろ?

沖田さんとそういうプレイ中なのか?

当人同士がいいなら趣味に口出しする気はない。


沖田さんと坂田さんが車に乗り込んできた。


「ごめんな美月ちゃん
ちょっくら うららちゃんの姉ちゃん捜すの手伝ってくんない」


お姉さん 道にでも迷ってはぐれたのかな。


取りあえず土方さんと近藤さんも乗り込む、さすがに狭い。


さっき飛び出してきた女性がうららちゃんのお姉さんだと坂田さんが教えてくれた。


お姉さんを捜す道すがら詳しい話を聞く。

実はお姉さんが新八君の本当の文通相手で、新八君を好きになったけど
うららちゃんに惚れた新八君を見て いたたまれなくなって逃げたそうだ。


それは…つらいよね。



新八君はお姉さんを追って行ったらしくここにはいない。

 
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