長い夢

□冥姫 第二十一話
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せっかくだし喝を入れてもらうためにも台詞をお願いした。

お互い正座をして向き合う。


「しっかりしろ、
てめーは宮中美月だろ
いつまで腑抜けてんだ

これでいいのか?」

「はい ありがとうございます」


微笑んだ。


「もっと甘い言葉でもよかったんだけどねィ」

「甘い言葉が蜜の味なのは知ってます
でも蜜が苦く感じることもあるんですよ

それに今 蜜を望んだら ダメだと思っている自分を肯定することになっちゃうんです

それはどんなに甘くても私には苦く感じますね」


真っすぐ沖田さんを見た。


「美月ちゃん 俺は……!」


突然 さっきのように私の腕を掴んだ。


腕を掴む手の力が強まったり弱まったり
まるで何かに悩んでいるようだった。


「………何でもない」

「?そうですか」


手が放れる。


「美月ちゃん縋りたくなったらいつでもきな」


冗談混じりなのは分かってる。


「縋…る?それはないと思います」


私は縋るんじゃなくて支えたい、あの人を。


「そーいや知ってるか?
この前…」



そこから談笑すること二時間。


土方さんの書類を手伝うと言ったのを思い出したところで談笑は終了。


急ぎ足で土方さんの部屋に行くと二時間前より書類が増えていた。

お茶は飲んでくれたらしく湯呑みだけが残っている。


「遅くなってすみません」

「かまわねェよ
お前にも都合があるだろうし手伝ってもらうんだ
文句なんざ言えねえよ」

「書類はどれをやればいいんですか」

「これだ」


厚さにして約2cmの書類をお土産に部屋に戻る。


終わった頃にはそれなりに時間が立っていた。


「できました」

「サンキュ」


書類を渡すとき またあの眼差しで見られたが気付かないフリ。


次の書類を持ってまた部屋にこもる。

書類を仕上げる、土方さんに渡す、眼差し、次の書類をする。

間に夕食があったが一連の動作を数回ループして土方さんに書類を持って行くと
頬杖をついて居眠りしていた。


もう夜更けとはいえ やっぱり疲れてるんだ。


つい寝顔を観察してしまう。


「そんなに私の恋話が気になりますか?」


小声で問う、返事が返ってこないことを承知で。


「気になる」


ぎょっとする。


「寝たフリですか」


呆れた。


「フリじゃないホントに寝てる」


頬杖をついたまま瞼を閉じている。


「起きてるじゃないですか」

「これは寝言だ、俺は寝ている
お前が何を言おうと眠ってるから聞いてない」


なるほど、忘れるから聞かせろと。


「別に面白くもないしドラマチックでもないですよ」

「そんなもんはどうでもいい、聴きたいだけだ」

「土方さんって恋話 好きなんですか?」

「その時々による」


そんなに気になるのか。


「ホントに面白くないのに…」


隠していたわけではなく 聞かれなかったから言わなかった私の初恋話

そこまで言うならお聞かせしましょうと

口を開いた。

 
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