長い夢

□冥姫 第二十一話
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伊藤さんのときの夜の告白以来
土方さんがおかしい。


私と二人で居るとソワソワして何かを聴こうとしてやめる。


土方さんのソワソワの理由、私には好きな人告白しか思い浮かばない、声がでないほど驚いてたから気になってるのかも。

でもそんなに人の恋話に興味があるようには見えないんだけど
ガキの色恋なんざ興味ねえってイメージならある。


よっぽど意外だったのか
それとも別の話?


あと他の皆さんも私に対していつもと対応が違うんだよね
どうしてだろう?


「土方さん 書類持ってきました」

「ああ」


書類を受け取るとき書類ではなく私の眼をじっと見てくる

以前も気がつけばじっと見ていたということはあった、理由は分からないけど。

でも以前と今では眼差しが変わっているのが分かる
それが少し気になる。

それだけじゃなくてまた何かを聴きたそうに落ち着かない。


土方さんの顔をじっと見た。


「目の下にクマができてますよ」


最近立て込んでるからな
伊東さんの一件で…


嫌だな、この気持ち。


「伊東のことでも気にしてんのか」


ドキリとした。
私のポーカーフェイスを見破るほどの読心術でも使えるようになったのかと勘ぐる。


「土方さん‥いつからエスパーになったんですか」


ちゃかして聴いてみた。


「エスパーじゃなくても今の顔見りゃ誰でも分かるだろ」


顔?ポーカーフェイスのはずだよね?


「今どんな顔してます」


冷静に考えれば変な質問だなと頭の片隅で思った。


「あの夜と同じ
痛くて苦しそうで悲しそうで落ち込んでるような顔」


走って部屋に戻ると鏡台に掛けてある布を乱暴にまくり、鏡で自分の顔を確認した。


痛くて、苦しそうで、落ち込んだ顔が映っている。

体がすぅっと冷えた。

痛くても苦しくても悲しくても微笑んでいられた
微笑んだ顔を作ることができた。


目を閉じて心を落ち着かせる

目を開けて見た顔はいつもの表情だった。


大丈夫、笑顔ならあんなに練習したんだから
あの地獄のようなときだって微笑んでいたのだから。

大丈夫、大丈夫、告白で心を乱している、私は大丈夫…大丈夫。


試しに微笑んでみると笑顔の私が鏡の中に映しだされている。

うん、もう大丈夫。

 
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