長い夢

□冥姫 第二十話 後編
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パトカーはバランスを崩し失速する。


後ろにあった車両が近づいてきた、このままじゃ!


「あぶっ…おごォォォ!!
早くなんとかしやがれェェ!!」


土方さんが人間橋のような格好で車両に足をかけて車を押している。


ここで応援したら怒られるだろうな、やめとこう。


「トッシー私に任せるネ」

「おかしい!何かがおかしい!」


神楽ちゃんは後ろの車両の扉を開けようとしているんだけど
土方さんの上に乗って開けようとしている。


ドゴオオ

神楽ちゃんが開けようとしていた扉が吹き飛んだ。


「近藤さん、さっさとこっちに来てくだせェ」

「総悟!」

「沖田さん!」


車両内にいた敵は全滅
だが沖田さんは右腕を負傷し、頭からは血が流れている。


「美月ちゃん生きて帰ってきたんだ、怒るのは無しにしてくれよ」

「はい!もちろんです」


笑顔で答えた。


内容は割愛するが、沖田さんはどんな状況でも土方さんをおちょくるな


…土方さんはホントに人間橋になっている。


ガシャン

車両に移ろうとしていた坂田さんが、万斉のバイクに引かれて地面に落ちた


心配する間もなく先頭車両が迫ってきた、後ろからも車両が迫る、潰されるのは時間の問題だ!


派手な音をたてて車はプレスされた。



そのあとの記憶がない。

気がついたら斜めに傾いた車両に倒れていた。


私のすぐ横には座席があって、これのおかげで私はここに留まれていた。

いったい何が?
起き上がって辺りを確認する
坂田さん以外は全員いるようだ。


息つく暇もなく敵が大勢攻めてきた。

状況が理解できなくても、敵は叩き斬るのみ!


三人ほど斬ったところで窓からヘリコプターが見えた。


「伏せろォォ!!」


ヘリから機関銃が雨のように発射される。

銃弾がやみ、頭をあげると左腕のない伊東さんが両手を広げるようにして皆を庇うように立っていた。


「先生ェェェェェ!!」

「伊東さん!」


伊東さんは血を吐き膝をついた

体にはいくつか穴が開いている。


機関銃を撃ってきたヘリは坂田さんが一本釣りするようにして撃破した。


驚いていると


「ボヤボヤするな副長
指揮を…」


伊藤さんの指示に従い列車から出た。


「総員に告ぐ!敵の大将は討ちとった!敵はもはや烏合の衆!
一気にたたみかけろ!!」


土方さんの宣言をカワきりに私たちも乱戦に加わり敵を斬っていく

適わないと分かると敵は逃亡しだした、それを見届け私は伊東さんの元へ走る。


伊東さんの元には新八君と神楽ちゃんがいた。


「伊東さん…」

「美月君か、これを言うのは僕のエゴだ、でも最後だから聞いてほしい」

「はい」

「僕は君に恋をしていた…
君のことがずっと好きだった
僕が必要と、別れが寂しいと言ってくれたのは君が初めてだったから…

君が愛してくれたなら…もう一人じゃないと……
ずっと隣にいて…僕を見てくれると思ったんだ」

「私だけじゃない!皆だって!」


床に雫が落ちていく。


「今なら…分かる…絆(いと)が皆と繋がってたって。

でも残念だな
君と…僕が出会ったのは…運命だと…思っていたのに……
僕の思い込み…だったらしい

美月君…泣かないでくれ
今の僕では…君の涙を拭うこともでき…ない」


つっかえながらも話す伊東さんの言葉を聞いて、私は泣いていた

なんで泣いているのか自分でも分からない。

 
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