長い夢

□冥姫 第二十話 前編
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ある日、屯所にブランド物の刀が大量に届いた。


送り主は伊東鴨太郎(いとう かもたろう)さん。


政治の手腕を買われて長い間 外回り(外交)に出ていたのだが、新設された役職参謀として帰ってくると辞令があった。



しかし刀の取り合いは凄かったな。

私は貰わなかった、だって今の刀が手に馴染んでるし
名工と呼ばれる匠に頼み込んで作ってもらった物だ、

ついでに言えば沖田さんの音楽再生機能がついた物や

近藤さんの粘着テープのコロコロが付けれるのもどうかと思う。


刀はともかくとして伊東さん元気にしてたかな。

歳は離れてるけど入隊した時期が近いからか、なんとなしに仲良くなった

知的で紳士的で物腰が柔らかいけど…。







刀が届いた数日後

部屋で書類整理をしていたら屯所内が騒がしくなった。
何かあったのかと見に行ってみると、伊東さんがの姿があった、帰ってきていたのか。


「伊東さん、お久しぶりです
元気でしたか」


笑顔で挨拶をした。


「美月君!本当に久しぶりだね、君こそ元気だったかい」

「見ての通り元気です」


話している最中、通りすがりの土方さんが目の端に映った
怪我をしてたみたい。


「土方さ…」


「美月君は刀を貰わなかったのかい?
僕の揃えた刀はお気に召さなかったかな
それならもっと優美なのを特注で作らせるよ」

「特注なんて滅相もない
私は今の刀で充分ですから貰わなかったんです」

「相変わらず謙虚だね、
変わってなくて安心したよ」

「そうですか」


自分ではよく分からない。



夜、伊東さんの帰陣を祝して宴会が開かれた。


「伊東先生、ご苦労様でした。
あれほどの武器、ケチな幕府がよく財布を紐解きましたな〜」


近藤さんは伊東さんのことを先生と呼ぶ、

士道を通すための知恵、

平たく言えば政治顧問として重宝している、と言うことだ。


この宴会の主役は伊東さんなんだけど私の目は伊東さんではなく
土方さんばかり映す。

違和感というか、呪いを受けた人のような?違うような?
ややこしい感じがして気になる。

沖田さんの抹殺儀式が成功したわけでもないし…
なんなんだろう?


「美月ちゃん、頑冥(がんめい)って何か知ってるかい」

「え、頑冥ですか?
確か頑固で間違った考えを改めないことだったと思います」

「なるほどねィ」


土方さんに気を取られてたから話の筋がよく分からないけど
伊東さんが高説を説いたのは隊士さんの話で分かった。






やがて宴会もお開きになり、私も部屋に戻ることにした。


帰り道の廊下を歩きながら明日からのことを考える、

なぜかと言うと
実は伊東さんと土方さん、仲が悪いんだよね、

明日から二人の仲裁役として頑張ろう!





屯所の廊下で土方と伊東はすれ違い、歩みを止めた。


「土方君、君に聴きたいことがある」

「奇遇だな俺もだ」

「君は僕のこと嫌いだろう」
「お前は俺のこと嫌いだろう」

 
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