長い夢

□お前への懐い 俺の思い 前編
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宮中の姿を捜す。

居た!!

警察に事件の状況を聴かれているようだ。


「宮中!」

「あ、土方さん」


宮中の左頬には紅い線がはしり 血が流れていた。

白い肌にできた紅い線に一瞬眼を奪われた、目立つから。


「美月ちゃん!か、顔に怪我してるじゃないか!!?」


近藤さんのほうが焦る。


「こんなの怪我の内に入りません、すぐ治ります」

「バカ野郎!!!」


キョトンとする宮中
辺りも静まり返る。


「仮にもお前は女なんだぞ!?
顔に傷が残ったらどうすんだ!
とにかく帰って治療するぞ」

「本当に大丈夫ですから」

「トシの言うとおりだ、一旦帰ろう」


しぶる宮中をパトカーに乗せて屯所に戻る。

頬の治療は自分ですると言って譲らなかったので、自分で治療をさせた。

頬には傷を隠すほど大きい絆創膏が貼られている。


「美月ちゃんは女の子なんだから顔に傷なんか作っちゃダメだよ」


俺と似たようなことを言う山崎。


「ホントにかすり傷ですよ、
血のわりに傷は浅いし
数日で綺麗に治ります」

「そうかよかった〜」


近藤さんは安堵のため息を吐いた。


「そういや総悟はどうした?
一緒に見回りに行ったよな」

「途中で はぐれてしまって…」


また暖簾に腕押しだったんだろう、それで少しでも困らせたくてわざとはぐれたってとこだろ

宮中とはぐれたあいつが一人で見回り……するわけないか、あいつサボりやがったな。


「沖田隊長はともかく、美月ちゃんが怪我を負うなんて相手はそんなに強かったの?」

「いえ それほどでもありませんでしたけど子供が人質に捕られてしまったんです、

さすがに子供の目の前で血の情景を作るのは憚(はばか)られましたから。

結果、血の情景を作らずに子供を無事救出することができました」


それは良かったとして


「山崎 総悟捜し出して連れてこい、見つけるまで帰ってくるな」

「はい」





悪態をつきながら山崎に引きずられるように帰ってきた総悟をそのまま俺と近藤さんが待つ局長室に連れてこさせた。


「いったいなんなんでィ」

「総悟ちょっと座りなさい」


近藤さんが少し怒ったように言い、総悟はおとなしく座る。


「お前 今日は宮中と見回りだったよな」

「そうでしたっけ?」


とぼけようたって無駄だ
今日はそれじゃ済まさねえよ。


「山崎 宮中連れてこい」

「はいよ」


自室に戻っていた宮中が遠慮がちに局長室に来た。

宮中の顔に貼られた絆創膏を見て総悟は驚く。


「銀行強盗に遭遇して負った傷だ
事件は解決した こいつの怪我を代償としてな」

「そんな大げさなものじゃ…」


怪我した本人が弁明しようとする。


「お前は黙ってろ」

「…」

「どういうことか分かるよなァ?
お前が一緒にいたら宮中は怪我を負うこともなかったかもしれねェ。

確かに宮中は真選組の隊士だ
だが女でもある。

もし宮中の顔に一生 消えない傷ができてたら
名誉の負傷じゃすまねェんだよ!

そんな傷ができてたら、お前どうする気だった?」

「俺は…」


総悟は傷を覆っている絆創膏をじっと見た。

宮中は困ったような顔をしている。

 
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