長い夢

□冥姫 第十五話
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カレーを食べ損ねた空腹万事屋さんたちの宿営地の前で、バーベキューをする真選組。


「うめェェェ!
やっぱキャンプのときはバーベキューだよな!」

「カレーなんて家でも食えるし!」

「マヨネーズがねーぞ」

「副長これはおいしそうに食べる姿を見せつける作戦です
マヨネーズはちょっと」


作戦なのは分かるよ?
分かるんだけど…


人として、やってはいけないことをやってる気がする…。


ましてや神楽ちゃんたちは私にとっては大切な友達。

…なんか、食欲がなくなってきた。


「宮中?あんま食ってねェな、やっぱマヨネーズがないからか」

「…違います」


「おやァ旦那方、まだいたんですかィ?」


バーベキューを食べながら沖田さんが話し掛ける。


「そんな粗末なテントじゃ蚊に刺されますよ、あっ」


バーベキューをわざと落とした。


「いっけね、落としちまった」

「沖田隊長、まだこっちにいっぱいあるから戻ってこいよ
そんなのもういいって」

「おーう、じゃ俺はこれで、別にそれ食べていいですぜ」


人としてさぁ…。


「見なせェ奴らの顔」

「腹減らして森から帰るのも時間の問題だな‥‥‥ん?」


「ワハハ、キャンプには酢昆布だよな〜」

「シティー派は酢昆布アルヨネ」

「なっ!?」

「酢昆布焼いて食ってる!
いたいたしい!
いたいたしいよ!!」


もうこれ以上は見ていられなくて、先に宿営地に戻った。



翌朝

捕まるのは普通のカブト虫ばかり。


それより


「皆、局長の言ったことでも嫌なことは嫌だと言っていいんだぞ」

「ハニー大作戦なんで」

「なんで身体に塗るんだよ」

「なんかハチミツパックしてるみたいですね」


体にハチミツを塗っている皆さんへの精一杯のフォロー

実際フォローになってるかは、分からないけど…。

土方さんが慰めるように私の肩をポンと叩いた。


「総悟はどうした」

「また単独行動だ
あいつはガキ共からカブトまきあげたり、無茶苦茶だ」

「そう言ってやるなトシ
瑠璃丸は陽の下で見れば、黄金色に輝く生きた宝石のような出で立ちをしているらしいが、姿は他のカブトと見分けがつかん
総悟のように手当たり次第にやるしかないかもな」


「生きた宝石ねェ、そんなもん本当に…」


気のせいじゃないよね?

土方さんは私を見ている。


まさか瑠璃丸をすでに見つけていて、自分の物にしようとしてる
とか思われてるんじゃ…。

女の子は基本的に貴金属や綺麗な物が好きだから疑われてる?

まさかね。


「銀ちゃん!新八ィィ!
見てあれ、金ピカピンのカブト虫アル」


神楽ちゃんが瑠璃丸をあっさり発見した。

でももし疑われてたなら、容疑は晴れたはずだ。


「いかん!それは」

「待て!」


飛び出そうとする近藤さんを土方さんが止める。


「ここで騒げば奴ら瑠璃丸の価値に気づくぞ
様子を見よう」


「オモチャですよきっと」

「ちげーよ銀蝿の一種だよ
汚いから触るな」

「ほらみろバカだろ、
バーカーだーろ」


物陰から小声で悪口を言う土方さん。


神楽ちゃんは名残惜しそうだったが、瑠璃丸を捕まえなかった。



坂田さんたちが去った後
急いで瑠璃丸を捕まえようとしたが、瑠璃丸は飛んで神楽ちゃんの麦わら帽子に留まってしまった。

 
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