長い夢

□冥姫 第十五話
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「お前なにしてるアルかァァァ」

「見りゃ分かるだろ」

「お前がバカだということしか分かんねーよ」


「ちょっ、ゴメン美月ちゃん起こしてくれ
一人じゃ起き上がれないんでねィ」

「は、はい」


沖田さんの腕を引っ張って起こした。


「フー、仲間のフリして奴らをおびき寄せる作戦が台無しだ」


台無し以前に、考えることがあると思う。


「いったい何の騒ぎだ。ん?」


近藤さんと土方さんと隊士さん達が騒ぎを聞きつけ集まってきた。


…近藤さん全身になんか塗ってる、サンオイル?


「お前らここで何やってる」

「お前のようにハチミツ塗りたくってる人に、答える義務はありません」


あ、ハチミツか

ポンと手を叩いた。

いやいやいやいや!!
何やってるの近藤さんっっ!!

さすがに驚愕した。


坂田さんは真選組がここにいる理由を聞いてくる。

土方さんは説明するいわれはない、と言って答えなかったが


「カブト虫とりだ」


近藤さんがあっさりバラした。


「私だって幻の大カブトを捕まえにきたネ
定春28号の仇をとるためにな!」

「何が仇だ、
相撲みて興奮したお前が自分で勝手に握り潰したんだろーが」


神楽ちゃん、それは八つ当りだよ?


「総悟、無茶なカブト狩りはやめろと言ったはずだ」


近藤さんが叱る。


「カブト虫をマヨネーズで捕ろうとするのは無茶じゃないんですか?」


マヨネーズ?


「トシ、マヨネーズでは無理だと言っただろう
ハニー大作戦でいこう」

「いや、マヨネーズ決死行でいこう」

「いや、なりきりキグルミウォーズエピソード3でいきやしょーや」

「いや、傷だらけのハニー湯煙殺人事件でいこう」

「映画やサスペンスドラマの題名みたいになってますよ
ちょっと捕り方について、色々と話し合いましょう」


「局長!前方の木にカブト虫が…」


双眼鏡を覗いていた隊士さんがカブト虫を発見した。


それを聞くなりカブト狩りだ、と言いながら走りだす万事屋さんたちと真選組。


双眼鏡を借りて見たけど、あの色は瑠璃丸じゃない。


神楽ちゃんが土方さんの頭を踏み台にしてカブト虫を捕ろうとした。


「カブト割りじゃあァ!!」


沖田さんが神楽ちゃんの足首を掴み、地面に叩きつけた。


「カブト蹴りじゃあ!!」


坂田さんが沖田さんの後頭部を蹴って木に激突させた。


「ワッハッハッ!
カブト……割れたァァア!!」


木に登っていた近藤さんは落ちた。

そりゃ全身にハチミツ塗ってたら滑るよ。


「カーブト‥」

「言わせるかカーブト…」


木に登りながらも、不毛な争いをする土方さんと坂田さん。


「「カーブートー」」


神楽ちゃんと沖田さんは、言いながら立ち上がった。


「「折りじゃああァァァ!!」」


二人は木の幹を砕いた。


木は倒れてカブト虫は飛んでいったが、騒ぎはしばらく治まりそうにない。





宿営地ではキャンプファイヤーの炎が灯っている。

はっきり言って暑い。


「とんだ邪魔が入ったな
一匹の虫を探すだけでも至難の技というのに、どうしたものか トシ」

「とにかくアレの存在だけは知られぬようにすることだ
価値に換算したら国宝級の代物だ」

「うむ、なんとしても見つけねば。
皆、今のうちに腹ごしらえしておけ、夜通し探索を行うぞ」


オオー!と声があがった。

 
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