長い夢

□冥姫 第十五話
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夏真っ盛りで暑い日が続く。

沖田さんはカブト虫の相撲にハマっていて他の隊士さん相手に相撲をとっているが、連戦連勝で向かうところ敵無しというくらい強い。


「凄いですね、沖田さんのカブト虫」

「他のカブト虫とは違うからねィ
でも隊内じゃ相手になる奴がいなくてつまんねェや。
美月ちゃんやってみねェか」

「私はちょっと…」


興味がない。



そんな夏のある日

近藤さんから召集がかかったので会議室に集まった。


「松平のとっつァんから命が下った

将軍様のペットの瑠璃丸が逃げ出したから探しだしてこい、とのことだ」

「名前から推測するに犬ですか?」


猫の可能性もあるか。


「カブト虫だ」

「はい?」


聞き間違いであってほしい。


「カブト虫だ」

「……そうですか」


詳しい説明を聞き、瑠璃丸探しの日々が始まった。


沖田さんは子供相手にカブト虫相撲のストリートファイトをして
カブト狩りに勤しんでいるが当たりはなし、

普通に探している私たちも成果はなかった。


正直 お手上げなので、将軍様が瑠璃丸と生き別れた森に行ってみよう、ということになった。



宿営地を決め、手分けして探す。


普通に考えて今の時間にカブト虫はいないだろうから、仕掛けをしておこう。


カブト虫が集まるというクヌギの木(ドングリの木)を探し、
見つけたので黒蜜を塗っておく。

他の場所にも在るかもしれないので、ざっと見て回ってみよう。



「気にするな、あれは森の精霊だ。

ああして森を見回って森に迷い込んだ旅人を魅了し
悪戯に心を惑わせ、森をさ迷わせたのち魂を奪っているんだよ──」


聞き慣れた声がした

あ、坂田さんたちだ。


「銀ちゃんのバカ!!」


ドゴ!

神楽ちゃんに顔面を殴られ、鼻血を出す坂田さん。


「今のは銀さんが悪いですよ」

「美月ちゃんの悪口言うなんてひどいヨ!
それ以上言うなら私が相手になるネ!」

「落ち着け神楽!
まだ続きがあるんだよ!
とにかく聞け!!

奪っているんだよ、
そして俺も精霊に魅了された一人なのさ…。

…なんだお前ら、そのバカにしたような視線はァァァ!!」


もう口をはさんでもいいかな。


「坂田さん」

「美月ちゃん、悪口じゃないからね、悪口じゃないからね!」

「それより鼻血でてますよ、大丈夫ですか」

「美月ちゃんも森に来てたアルか」

「ちょっと野暮用でね」


誤魔化した。


「神楽ちゃんたちは、どうしてここに?」

「定春28号の仇をとるために来たネ」

「定春28号の仇?」

「銀さんアレ!」


急に新八君が大きな声を出して木を指差す。


「うおっ、すげえ大物じゃねェか!!」


軽く1メートル超えの、姿形はカブト虫が木に留まっていた。


この森で何があったというのか!?


坂田さんたちは木をガンガン蹴ってカブト虫を落とそうとしている。


「危ないですよ!もしかしたらカブト虫に似た何かかも──」


ズズゥン

大きな音をたてて巨大カブト虫?は落ちた。


「よっしゃ!」


神楽ちゃんが巨大カブト虫を引っ繰り返す。


「何しやがんでィ」


ドゴッ


巨大カブト虫ことキグルミを着た沖田さんは、坂田さんたちに踏まれた。

あまりのことに目が点になる。

 
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