長い夢

□冥姫 第九話
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「え、おたく幽霊なんて信じてるの、イタタタお母さん痛いよ〜
ここに頭 怪我した人がいるよ〜!」

「お前いつか殺してやるからな」

「土方さんも見たんですかィ」

「人間じゃねえような気配は感じた」

「「イタタタお父さん痛いよ〜」
早く絆創膏もってきてェェ
人一人包めるくらい大きいやつ」

息ぴったりの沖田さんと坂田さん。

「お前ら
打ち合せでもしたのか!」

……う〜ん。

「じゃあ私も痛い人になるわけですね」

「「「え」」」

「信じてんの?」

坂田さんがたいして驚くでもなく
いつもと変わらない様子で聴いてきた。

「はい」

「マジでか」

真意を確かめてくる沖田さんの目は少し丸くなっている。

「信じる信じないはご自由に。
でもいますよ」

「聞いたかお前ら、宮中は俺と同意見だ」

「屯所にはいませんけどね」


「ぎゃああああああああ!!!」

近藤さんの悲鳴だ!
いそいで厠に向かった。

神楽ちゃんが何かあったのかと聞きながらドアをドンドン叩いている。

「どけ!!」

土方さんがドアを蹴やぶった。

近藤さんは逆さまになって頭を便器に突っ込んだ状態で発見された…。

何があったんだ…本当に。





近藤さんを部屋に運んで布団に寝かせた。

「赤い着物…赤い着物の女が……こっちに来る」

悪夢にうなされている。

「近藤さん いい年こいて寝言なんて恥ずかしいですぜ」

「コレはあれだろ?
泣かせた女の幻覚が見えてんだろ」

「近藤さんは女に泣かされても泣かしたことはねェよ」

近藤さんの女性遍歴を聞くと切なくなる。

「じゃあオメーが泣かせた女が嫌がらせに来てんだ」

「そんなタチの悪い女を相手にした覚えはねェ…
宮中」

「はい?」

「今はそんな相手いねェーから、フリーだから」

「はぁ…そうですか」

なんでわざわざ私に言うのか分からないけど
土方さんの女性遍歴とか、どうでもいい。





気がつけば外は暗くなっていた。

「やっぱり幽霊ですかね銀さん」

「俺ァ非科学的なモンは絶対に信じねェ
ムー大陸はあると信じてるがな
付き合いきれねェ帰るぞ」

「銀さんなんですかこれ」

坂田さんは新八君と神楽ちゃんと手を繋いでいる。

「お前らが恐いだろーと思って気ィ使ってやってんだよ
分かれよそのくらいよ〜」

「銀ちゃんの手ぐっしょりしてて気持ち悪いアル」
…。

「あっ、赤い着物の女!」

ガシャン

沖田さんの嘘を聞いて、坂田さんは押し入れに飛び込んだ。

「何やってんすか銀さん」

「…ムー大陸の入り口が」

「旦那、もしかしてあんた幽霊が…」

「なんだよ」

そうなんだ。

「土方さんコイツは…あれ?」

……土方さんは大きな壺に上半身を突っ込んでいる。

「何やってんですかィ」

「マヨネーズ王国の入り口が」

途端に三人の目が冷たくなり部屋を出ていこうとする。

「待て!コイツはそうかもしれんが俺は違う!」

「ビビッてんのはオメーだろ!
俺は胎内回帰願望があるだけだ!」

土方さん それはそれで大問題です
と言うより
そっちの方が大問題です!


「ムー大陸でもマヨネーズ王国でも勝手にいけよクソが」

毒舌神楽ちゃん。

「「なんだ そのさげすんだ目はァァ」」

「まあまあ皆さん、とりあえずお茶でも…」



三人はある一点を凝視して

「ぎゃああああ」

逃げるように走って部屋を出ていった。


「どうしたんでしょ…う」

振り向いて三人が走り去った理由がわかった。

「どーしたの美月ちゃんまで」

「後ろ…見てください」

「なにがあるってんだ」

 
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