長い夢

□冥姫 第三話
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朝 会議室


「以上だ、宮中 今日提出の報告書はできたか」

「はい もちろんです、後で持っていきますね」

「おう」



朝食を済ませ、報告書や他の書類の束を持って土方さんの部屋に行った。


「まずこれが報告書です、
こっちは明日期限のやつで、これは明後日(あさって)が期限の一部です」


「お前はいつも仕事早いな、一人で他の隊と同じ量の書類やってるってのに
ったく少しは他の奴らに見習わせたいぜ」


「これくらいは…じゃあ私は市中見回りに行ってきますね」

昔から書類整理は人より早かった
今ではときたま土方さんの書類を手伝ったりもする。


真選組の人たちは基本的に書類整理が苦手だから、結果的に土方さんがやることになるのが多い。


「気をつけて行けよ」

「はい」


廊下を歩いているとラケットを持った山崎さんと会った。


「美月ちゃん 俺とミントンしない?」

「ごめんなさい、これから市中見回りなんです」

「そっか残念」

「また今度誘ってくださいね」


微笑んだ。


「うん」


嬉しそうな顔で山崎さんは去って行った。


「美月ちゃん」


柱の影からこちらを伺うようにして声をかけてきたのは近藤さんだった。

「近藤さん、何かご用ですか」

「おいしいお菓子があるんだ、よかったらどうかな」

「お菓子ですか惹かれますね、けど今から見回りに行かないといけないんです」

「ちょっとだけ、ちょ〜っとだけだから」

「…じゃあ、ちょっとだけ」



近藤さんの部屋でお菓子を頂く。


「おいしいですね」

「そうだろ」


近藤さんはお茶を淹れてくれた。


「すみません 本来なら私がやることなのに」

「いいからいいから。
…実は美月ちゃんに折り入って相談があるんだ」

「相談ですか?力になれるか分かりませんけど、お聞きします」

「あのさ、女性は何をもらうと嬉しい?」


真顔で近藤さんは聞いてきた。


「一概にこれという物は……
その人の好みとか分からないんですか?
それだけじゃなくて面識が有る無しでも変わってきますし…」

「面識は有る。俺が調査したかぎりではハーゲンダッツが好きな可能性が高い」


「じゃあハーゲンダッツをプレゼントするか、店内で食べられる店舗に誘えばいいんじゃないですか」


「プレゼントはしたよ……一度も………受け取ってもらったことがないんだけどね」

うわぁ切ない。


近藤さんから重い空気が流れ出ている。

す、少し話題を変えよう。

 
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