もう用はないのできびすを返して歩きだす。
あ、そーだ
「そのハンカチ差し上げますね」
微笑みながら言い、今度こそ路地裏を後にした。
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「分かんねェもんだな、殴られたのに腹が立たねー
美月ちゃんがゴリラをいかに思ってるかは分かったけどな」
殴られて分かったのは、腹が立たなかったことと、ゴリラのことだけじゃない。
俺を殴ったときの眼は真剣で真っすぐで澄んでいて
一本 筋が通っているのが透けて見えて…
ただ可愛いだけの女の子じゃないと痛いほど俺に知らしめた。
殴られて、ますます好きになる日がくるとは夢にも思わなかった。
初めて見た瞬間、ガッと眼に飛び込んできたような、あの感覚をなんと説明すればいい?
あの日から気付けば美月ちゃんのことを無意識に考えるようになってて
外に出れば、偶然出会えねーかな、なんてことばかり考えて
なんでだ?と不思議に思っていた。
その理由、今なら解る。
俺はあの娘に惚れてたんだ
所謂 一目惚れってやつで。
つっても外見ではない。
確かに可愛いし美少女の基準にも達してるけど、絶世の美少女ってわけじゃないんだよ。
容姿以外で一目惚れすることってあるんだな。
俺は美月ちゃんの魂に一目惚れした。
何をバカな、とは俺も思ったさ、
でもしょうがねーじゃん
そう言うのが一番しっくりくるんだから。
まいったね〜こんなこと考えちまうなんて、ガキじゃあるまいし。
なのにガキみたいに惚れちまったよ。
さーて謎も解けてスッキリしたことだし病院に行くか。
→後書き