長い夢

□冥姫 第二十九話
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走りだした静かな車内に雨音だけが響く。


「止めてください」


わずかなブレーキ音がしてパトカーは停車した。


私はドアを開けて車外に出た。


「何してんだ濡れるぞ」

「いいんです、今の私に土方さんに送ってもらう資格はありません」


この行動が自己満足なのは分かっている。


「バカ言うな」

「頭も冷やしたいんです…」

「しょーがねーな」


パトカーを道の端に寄せ、土方さんも車から降りた。


「濡れますよ」

「かまわねェ俺も頭 冷やしてーんだ、怒鳴って悪かったな」


土方さんはパトカーに鍵をかけると歩きだした。


「土方さん」

「なんだ」


後ろから呼び掛けると土方さんは立ち止まる。


「気にかけてくれるのは嬉しいです
でも私は荷物にはなりたくない…
だから前みたいに接して欲しいです」


「…お前が望むなら努力してやる」


土方さんはまた歩きだした。


客観的意見だけど今 土方さんがモテる理由が分かった気がする、

無自覚女殺しだな、きっと。


雨に濡れながら歩いていたら雨の雫が白くなった

雨が雪に変わったのだ。


先を歩く土方さんも立ち止まり空を見上げている。


雨が雪に変わる瞬間を初めて見た。

ちょっと奇跡みたいだな、と思った。





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