走りだした静かな車内に雨音だけが響く。
「止めてください」
わずかなブレーキ音がしてパトカーは停車した。
私はドアを開けて車外に出た。
「何してんだ濡れるぞ」
「いいんです、今の私に土方さんに送ってもらう資格はありません」
この行動が自己満足なのは分かっている。
「バカ言うな」
「頭も冷やしたいんです…」
「しょーがねーな」
パトカーを道の端に寄せ、土方さんも車から降りた。
「濡れますよ」
「かまわねェ俺も頭 冷やしてーんだ、怒鳴って悪かったな」
土方さんはパトカーに鍵をかけると歩きだした。
「土方さん」
「なんだ」
後ろから呼び掛けると土方さんは立ち止まる。
「気にかけてくれるのは嬉しいです
でも私は荷物にはなりたくない…
だから前みたいに接して欲しいです」
「…お前が望むなら努力してやる」
土方さんはまた歩きだした。
客観的意見だけど今 土方さんがモテる理由が分かった気がする、
無自覚女殺しだな、きっと。
雨に濡れながら歩いていたら雨の雫が白くなった
雨が雪に変わったのだ。
先を歩く土方さんも立ち止まり空を見上げている。
雨が雪に変わる瞬間を初めて見た。
ちょっと奇跡みたいだな、と思った。
→後書き