長い夢

□冥姫 第二十九話
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「美月ちゃん ちょっといいかい」

「はい 何ですか」


「資料室で探し物をしてるんだけどねィ
見つからないんで手伝ってほしいんでさァ」


珍しい、沖田さんが資料室で探し物。

書類でもやるのかな。


「もちろん構いませんよ」

「助かった、美月ちゃんならどこに何があるか詳しいだろ」


連れ立って資料室に向かい戸をあけた、
いつもは施錠(せじょう)されているが沖田さんが開けたのか施錠はされてなかった。


室内には様々な資料が所狭しと棚に並んでいる。


「どの資料を探してるんですか」

「数ヵ月前のある少女が関わってた事件」


記憶から該当する事件を探すがキーワードが曖昧で思い当たらなかった。


「もっと詳しく教えてください」

「数ヵ月前の美月ちゃんが笑わなくなった事件に関しての資料」


私の時が一瞬止まる。


「何を急に…」


沖田さんを見ると真剣な目とぶつかった。


「いるんだろ?美月ちゃんを傷つけた奴が」


沖田さんが心配してくれていたのは知っている。


「別に傷つけられた訳じゃないです」


微笑んだ。


「美月ちゃんが落ち込んでるとき俺は何もできなかった
理由さえ分からなくて悔しかった

本当は今の嘘に乗るのが一番いいかもしれないけど
俺は美月ちゃんが傷つけられて黙ってるなんてできないんでねィ」


静かな言葉に感情が入り乱れている。


「本当に傷つけられたんじゃないんです、
誰が悪いとかじゃなく どうしようもなかったんです」


沈んだ表情を見られたくなくて俯いた。


「…美月ちゃんの母ちゃんが言ってた、
あることに直面してるって、笑わなくなったのは
“あること”のせいだったんだろ」


母上が!?


「ほ、他に何か言ってましたか?」


急に母上が話題に出てきて意味もなく焦る。


「可能なら背中を押して導いてほしいって」

「沖田さんだけにですか」

「俺と土方さんに」


…‥ああ、それでか。

土方さんがあんなに私の心配をしてくれたのは。


母上 恐いもんね、

きっとお見合いぶち壊した償いとして力になれって言われたんだろうな…。


沖田さんもそうなのかな。


「誤解がないように言っとく
俺は誰かに言われたから美月ちゃんを心配してたわけじゃない。

それに俺は美月ちゃんが元気なときだけ傍にいるなんて嫌なんだ

元気がないときや落ち込んでいるときこそ傍にいて力になりたい

だから…傷つけた奴を教えてほしい」


沖田さん ありがとうございます。

言われたから心配してくれたんじゃないんですね。

一瞬でも疑ってごめんなさい。


「私には……大好きな兄がいるんですけど兄上に二度と………会えなくなったんです…」


口に出すのは、やっぱり痛かった。

 
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