長い夢

□冥姫 第二十七話
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「私のことは放っておいてよ!」


最後は癇癪(かんしゃく)を起こした私。


「放っておけるわけないだろ
美月は大切な妹なんだから」


私を絶望に突き落とす優しい言葉。

兄上は悪くない
変わらず優しい人、

悪いというなら恋をした私のほうだ。


結局 兄上は諦めなくてループは続いた。


その頃 私は退魔師として魔物といわれる敵相手によく暴れていたのだけど

ある日 私は魔物に遅れをとり怪我をした。


まあまあな深手だったがすぐ回復するからと怪我には無頓着なままだった私を一番心配したのは兄上で
初めて怒られた。


「何かあったらどうするんだ」

「すぐ治るよ」

「そういう問題じゃない!
俺が…嫌なんだ、美月には血を流してほしくない
俺が嫌いならそれでもいい、
だけど怪我だけはしないでほしい」

「…………嫌い?」


一番遠い言葉だ。


「そうだろ?俺のことを避けてる」


その時 初めて気がついた

兄上を傷つけていたことに。


自分にだけ必死で相手の気持ちなんて考えられなかった、

だって好きな人を知らずに傷つける代わりに私はギリギリをなんとか保っていたのだから。


…恋をしてからどのくらい立っただろう

いつから私は傷つけていたんだろう。

傷つけたくなんてないのに。


色んな感情がぐちゃぐちゃに入り乱れて泣くことしかできなかった私に


「ごめん、美月ごめん」


謝る必要なんてないのに兄上は私に謝り続けた。



その日から少しして封印されていた強力な魔物が復活をとげ

魔物との戦いは熾烈(しれつ)を極めた。


私も毎日のように戦っていた。

強い相手と戦っている間は兄上への想いを忘れられたから苦に思ったことは ほとんどない。


そんな当時の私は相当無茶をしているように見えたらしい。


もちろん兄上が黙っているはずもなく、私はお説教を受けていた。


「美月が強いのは分かってる、
だけどあんな一歩間違えたら取り返しがつかない戦いはやめてくれ」

「大丈夫だよ、怪我したってすぐ治るし」


この高い回復能力などは女にのみ受け継がれ、兄上にも涼夜にも備わっていない。


「そういう問題じゃないだろ」


兄上は深いため息を吐く。


ため息にカチンとした。


「兄上はいい加減 私の心配なんてしないで別の女の子の心配でもすればいいじゃない!」


限界なんてとっくに超してた私の完全な八つ当り。


「そんなこと出来るわけないだろ美月が誰より大切だから」


なんで…
なんでそんなこと言うの!?

どうせ妹としてでしょう?

それなら言われないほうがいい。


「いいかげん私のお守りなんて卒業しなよ!」


叫ぶように言った私は兄上の眼を見てビクリとした。


「いいのか?卒業して」


真剣な声に眼差し。

 
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