いきなり
スパーンと襖が開いた。
「土方さん!?沖田さん!?」
確かに撒いたはず。
二人は私の腕を掴んで引き寄せた。
「悪いがこいつは俺らが先約だ」
「横からかっ攫らわれるのは我慢ならないんでねィ」
「なんで来たんですか!!」
「なんだ貴様ら?美月を放してもらおうか」
兄様が冷ややかに二人を見る。
「宮中 言ってやれ!
お前の気持ちを!
お前はこいつと結婚したら幸せなのか!?」
土方さんと沖田さんが真っ直ぐ私の目を見ている。
その目に背中を押された。
…幸せ?
そんなわけない…。
二人のおかげで決心がついた。
憧れていて好意を寄せている相手だからこそ言い淀んでいた私の気持ち
はっきり言葉にしないと伝わらないよね、
兄様 包み隠さず伝えるよ。
「ごめんなさい 私───」
「美月!……言わなくていい…分かってるから……」
「え?」
兄様は諦めのような自嘲のような目をしていた。
「美月…」
「兄様……」
急に手をガッと取られた。
「よし!逃げるぞ!」
「急ぎなせェ」
私は二人と手と手を取って逃亡した、
僅かに後ろ髪を引かれながら。
走りながら前を見た、全てを吹っ切るように。
逃亡先はもちろん屯所。
「よかったんですか?
母上が怒ると恐怖ですよ」
殺気を浴びたから知ってますよね。
「上等だ、それにやらないで後悔するよりやって後悔するほうがいいだろ?」
「そういうことでさァ」
…そうだね!
「私、お二人と違う出会いをしてたら どちらかに恋してたかもしれません」
本当に突然そう思った
自然に笑顔にもなる。
あの人と出会わなかったらそうなっていただろう。
あれ?土方さんも沖田さんも口が開いたまま固まっている
突拍子すぎたかな、
あ、でもあの人がいなかったら出会うこともないか。
「縁って不思議ですね」
…わざと固まってる?ってくらい反応がない。
翌朝
ハリケーン88号は屯所に来て私は自室でお説教?を聞いていた。
「あんなマネして逃げるなんて兄君とのお見合いは破談になっちゃったわよ」
お説教というより文句に近い。
「あの人以外は考えられない」
「…ねえ美月いつまで待つの」
「いつまでも」
「美月…もう待つのはやめなさい」
それはできない。
「待つって決めてるの」
「真実を話すしかなさそうね」
「……何かあったの?」
胸騒ぎしだした。
母上は私より特殊な力が強い
私にはない力を持っている。
「琉冬(りゅうと)はね…」
母上から語られた話しは信じられない、信じたくない話しだった。
「嘘だ」
声が震えている。
「そんなんだから琉冬が心配するのよ」