長い夢

□冥姫 第二十六話
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話しがそれたけど良い案は出ず、そのまま約束の日になってしまった。


軽く荷物を纏め近藤さんに挨拶をする。


「美月ちゃんが嫌なら力を貸すぞ」


借りてほしそうな近藤さん。


「いえ、ご迷惑をおかけするわけにはいきません」


私のせいで真選組に迷惑をかけたくない。


「しかしなァ…」


渋る。


「荷物は後日取りにきます」


あえて置いていく
そしたら後で屯所に取りにこれるから。


近藤さんに挨拶を済ませ廊下を歩くと土方さんと沖田さんが立ちふさがるように立っていた。


「ホントに…行っちまうのかィ」

「…はい」


目を伏せた。


「そうか、それを聞いちゃあお前を通すわけにはいかねェな」


つまりは通せん坊、
子供の頃 涼夜にやってた悪ガキどもを叩きのめしたっけ。


「突破させていただきます」


私は走って別ルートを目指した。


「逃がすか!総悟はそっちに回れ!」


二人が阻止しようとしてきた、が!


「いない…?お前のほうには来たか?」

「こっちには来てやせんぜ」

「チッとにかく捜すぞ!」


私は走って母上との待ち合わせ場所に向かっていた。

入隊以前に忍者と命懸けで追い駆けっこした経験が活かされたのだ。


待ち合わせ場所に思いの外 早く到着した私を


「早かったわね感心感心」


と言って迎えた母上に着替えや化粧を施された。


軽くお昼を食べ、回避の手立てを考える。


「何かいい案は浮かんだ?」


浮かんでないことを承知で聴いてくるのだから人が悪いというかタチが悪い。


「私 母上と同い年だったとしても友達にはならないと思う」

「なぁに急に、
でも どうもありがとう

私は美月の“母親”であって“友達”じゃないもの、
美月と友達?そんな関係性 堪らないわ」


出立の時間になりタクシーで会場の梅花に向かう。

変なの、自分のことなのに実感が湧かないや…。


ほどなくして梅香に到着。

仲居さんに案内されて部屋に入ると兄様が座っていた。


私が近くにいたときに成長期を終えた兄様は少し大人っぽくなった以外あんまり変わってない。


「美月、久しいな」


以前と変わらない優しい笑顔。


「お久しぶりでございます…兄様」


今さらな両家の紹介をして後は若い二人でとお決まりな流れ。


二人きりにされ どうしようか考えていたら


「美月 綺麗になったね、最後に見たときより大人っぽくなった」

「そう…ですか…」

「まだあいつのこと忘れられないんだろ」


直球で聴いてきた。


「待ってるんです」

「いつ戻ってくるかも分からないのに?」


元仲間だけあって知り尽くしている。


「もう充分待っただろう」


まだ三年も待ってない。


「もう充分だ 待たなくていい、その言葉は兄様に言われても意味がないんです」


それはあの人に言われて初めて意味を成す。

 
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