翌日から、佐々木さんは道場で土方さんに剣の稽古を付けてもらうようになった。
何度倒されても、立ち上がり挑んでいく。
その様子を少しだけ見て玄関に急いだ、待ち合わせをしているから。
「お待たせしました」
「んじゃ行くか」
「はい」
私と沖田さんは見廻組に誤認逮捕された坂田さんの釈放に行くように言われていた。
見廻組の屯所を見上げる、
五階建てくらいかな。
入り口には白い隊服を着た人が立っている、
真選組の隊服を白で染め上げたような隊服だ。
中に入ると見回組の人達にジロジロと不躾な視線を向けられた、
白の中の黒は目立つから、仕方ないといえば仕方ない。
視線を受け流し、坂田さんの釈放手続きを済ませたあと、坂田さんが入れられている牢屋に直行。
牢の入り口が開き、坂田さんが出てきた。
「大丈夫でしたか」
「旦那、お勤め───」
ゴッ、という破壊音と伴に沖田さんのすぐ後ろにあった壁が凹む。
坂田さんが手枷に付いている鉄球を使って沖田さんを攻撃したからだ。
なおも攻撃は続くが、沖田さんは難なく避けていく。
坂田さんは怒り心頭、その矛先は真選組に向けられているので本気で狙ってくる。
「わざわざ釈放手続きしてあげたのに、これが旦那の礼ですか」
「逮捕したのは君たちのようなもんだよね」
坂田さんが狙うのは沖田さんばかりで、私のほうには鉄球が飛んでくる気配すらない。
「土方さんとボンクラ(鉄)のしたことは俺たちには関係ねーや」
沖田さんの顔面めがけて飛んだ鉄球は突然ゴパァンと割れ、鉄の破片になった。
割れる直前に聞こえた銃声のしたほうを反射的に見る。
「悪いのは全て当方です、ですから真選組を責めないでください」
真選組の隊長服と似たデザインの隊服を着た片眼鏡の男性が銃をしまっていた。
あの人こそ見廻組局長
佐々木さんの異母兄でもある佐々木異三郎さん。
さっき釈放手続きしているときにわざわざ挨拶にきて、私がいたほうが面倒が少ないからと、ここまで付いてきてくれたのだ。
土方さんは
『いけすかねェ片眼鏡の野郎だ』
と言っていた。
「申し訳ありませんでした、聞けば真選組のご友人とか。
お詫びに一日中長文謝罪メール送り付けるんでメアド教えていただけますか」
一日中送り付けるって…謝罪という名の嫌がらせだ。
坂田さんは持ってないはずの携帯のアドレスを教えてかわしていた。