長い夢

□冥姫 第八話
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祭り当日

沢山の出店に人出
夜になりさらに増える。

近藤さん、土方さん、私は将軍様が座する矢倉の前で警護をしている。

沖田さんはトイレに行ったきり帰ってこない
サボったな。


「山崎の野郎おせーな」

「どうした」

「お上がたこ焼きをご所望だってよ、呑気なもんだぜ」


「山崎ただいま戻りました!」

タッタカターと走って戻ってきた。

「おせーぞ
マヨネーズ忘れずにつけてもらったろーな!」

中を確認すると、たこ焼きの箱の中には三個のたこ焼き、
明らかに抜き取られている。

「実はあまりに急いでたんで、すっ転んだ拍子にぶちまけちまいまして
すみません、山崎退一生の不覚」

「そーか、俺はお前の口元についてる青のりの方が一生の不覚だと思うがな」

確かに!

「違うんです!これは途中で食ったお好み焼きについてた青のりなんです!」

ボコられて踏まれる山崎さん。

「副長このままじゃ口からもんじゃがァァァ!」

「どーするよ…って食ってる!?」

近藤さんが残りのたこ焼きを食べている。

「美月ちゃんも一つどうだ」

「遠慮しておきます
たこ焼き私が買ってきますね」

言って走りだした。

「マヨネーズ忘れんなよ」

「はーい」


たこ焼きの屋台は多い
どこで買おうかな?と考えていると
夜空が輝き、足が止まった。

ドォーン!
パァーン!

花火だ、きれ〜

この音がお腹に響く感じも好き。

同じ火薬なのに爆弾とは全然違う
花火が夜空を飾る。


花火が止まった、花火玉をつめこんでるのかな?

ドォーン!

矢倉に向かって煙幕のようなものが撃たれた!

騒ぎだす見物客。

「攘夷派のテロだァ!逃げろー!!」

早く戻らなきゃいけないのに人の波に押されて、進むどころか押し戻される。


かなり流されてしまったけど、やっと波が治まり一気に駆け出した。


辺りには人っこ一人いないと思ったが
前方に派手な着物を着て編み笠を被った人がいた。

その人を見て急停止。

腰に差しているのは間違いなく刀。
警戒しながら近寄った。

あと五歩という距離で止まり、相手を注視する。

私の視線を気にすることなく派手な着物の人が編み笠を脱いだ

高杉晋助の手配書通り、左目に巻かれた包帯。

右目だけが私を見ている。

ヤバいな あの目
常人の目じゃない。


「本当に江戸にきてたんだ」

「でかい祭りがあると聞いてなァ。
真選組唯一の女隊士
お前が冥姫……か?
…なんだァまだ小娘じゃねェか」


刀を抜いて構え、目付きも鋭くした。

高杉も刀を抜く。

「クククおもしれェ
獣が潜んでやがる
俺が引きずりだしてやるよ」

高杉が斬りかかり
刀と刀がぶつかり金属音が響いた。

「あんたも獣を飼ってるみたいね」

刀が交錯する。

「いい眼だァ
人を斬ることを躊躇せず
世の裏も闇も知り
くだらないと思っている眼だ」

一瞬だ
一瞬だけ意識が戦いから逸れた。

 
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