□冥姫 第四十五話 後編
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「あながち…間違いじゃねェな」

「え?」


真剣だった眼が和らぎ 土方さんがフッと笑う。


「…なんてな」


からかわれた。


「もう、冗談が過ぎますよ。
喉が乾いたから飲み物買ってきますね」


土方さんの顔を見ないようにして病室を出て、廊下を歩く。


あ、焦った
不覚にも土方さんの偽告白もどきに焦ってしまった。


軽く流せなかったのが悔しい。

そう、悔しい、いきり立つ程ではないけど悔しい。


……あれ?なんか頬が熱い?

確認のために触ってみたら確かに熱かった。


…………なんで熱いんだろう?



自販機に着いた頃には熱は引いていた。


ホットフラッシュだったのかな?


少しの疑問だけが残った。





美月が出ていったあと土方の口が弧を描き、小さく笑う。


『分かりづれェー、
あいつの行動がなけりゃ気がつかなかったぜ』


美月の不安に気付けたことが嬉しいのだ。


“隠そうとしても見抜けるようになってやる”


いつか美月に宣言した言葉に近付けたことが嬉しいのだ。


『告白はまだ駄目だな』


間違いではないと言ったときの美月を思い出す。

小さな表情の変化の中には驚き、戸惑い、困惑しかなかったように感じた。


美月が置いていった紅いバラを手に取る。


『死ぬほど
恋こがれています、か

焦がれるお前が振り向かなければ、俺の恋心は死ぬだろうか?

簡単に死ぬわけねえな。

……縁起でもねェ』


そう思って息を吐く

笑みは自然に消えていた。





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