「あながち…間違いじゃねェな」
「え?」
真剣だった眼が和らぎ 土方さんがフッと笑う。
「…なんてな」
からかわれた。
「もう、冗談が過ぎますよ。
喉が乾いたから飲み物買ってきますね」
土方さんの顔を見ないようにして病室を出て、廊下を歩く。
あ、焦った
不覚にも土方さんの偽告白もどきに焦ってしまった。
軽く流せなかったのが悔しい。
そう、悔しい、いきり立つ程ではないけど悔しい。
……あれ?なんか頬が熱い?
確認のために触ってみたら確かに熱かった。
…………なんで熱いんだろう?
自販機に着いた頃には熱は引いていた。
ホットフラッシュだったのかな?
少しの疑問だけが残った。
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美月が出ていったあと土方の口が弧を描き、小さく笑う。
『分かりづれェー、
あいつの行動がなけりゃ気がつかなかったぜ』
美月の不安に気付けたことが嬉しいのだ。
“隠そうとしても見抜けるようになってやる”
いつか美月に宣言した言葉に近付けたことが嬉しいのだ。
『告白はまだ駄目だな』
間違いではないと言ったときの美月を思い出す。
小さな表情の変化の中には驚き、戸惑い、困惑しかなかったように感じた。
美月が置いていった紅いバラを手に取る。
『死ぬほど
恋こがれています、か
焦がれるお前が振り向かなければ、俺の恋心は死ぬだろうか?
簡単に死ぬわけねえな。
……縁起でもねェ』
そう思って息を吐く
笑みは自然に消えていた。
→後書き