□冥姫 第三十四話
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このままでは負ける、
誰もがそう思ったとき一枚のカードを出した。


出したカードは‘無’
全てを無に引きずり込む最凶最悪のカード。

両者ともLP0で相討ち。


倒れふした二人はセコンドの呼び掛けで立ち上がるとボクシング対決に突入した。


そのさなかトッシーが新八君に胸中を語る。


「本当はオタクの覇王なんてどうでもよかったのかもしれない
仲間と共に一つのことに熱中したかっただけかもしれない
ライバルと共に全力をつくして戦いたかっただけなのかもしれない」


両者一歩も引かない攻防が繰り広げられ、相討ちで両者ダウン。


「立てェェェェ!
立つんだトッシー!

最後の最後まで戦え!燃えつきるまで戦って生きざまを俺達に焼きつけてみせろ!!」


近藤さんに続き私も必死に声援を送る。


「トッシー!男なら最後までやってみせろ!」


立ち上がろうとする二人に会場全体から頑張れコールが起きる、

二人はなんとか立ち上がり最後の一撃を放った。



‐‐‐



屯所の庭の一角

大きな岩には遺影に花にお線香が供えられ
土方さんと私は手を合わせて山崎さんがそれを見ている。


「山崎、これは俺がトッシーに扮(ふん)していたときの写真だ
トッシーの写真に替えとけって言っただろ」

「見た目は同じだし、どっちでもいいでしょ」

「また蘇ってきたらどーすんだ
花も毎日手入れしとけよ」

「蘇りませんよ、もう二度と…」

「そーいや聞いたか?あの話」

「親衛隊のことで?」

「なんの話ですか?」


山崎さんの説明によると親衛隊(新八)は公式の座を辞退したとのこと。


「ついでにこんなモノ置いていきましたよ」


山崎さんが土方さんにカードのような物を見せた。


土方さんはこれ以上 借りをつくりたくないから親衛隊を脱退した隊員を戻す と言って
さっそくどこかへ行ってしまった。


丁度いい遺影がみつかったと置かれたカードは

【寺門通 公式ファンクラブ会員証
No.0000001 
トッシー】


会員証だった。



山崎さんが去っても私は独りトッシーの会員証を眺めていた。


ねえ、トッシー聞いてくれる?


私、変なんだ。


心の奥底がざわめいて落ち着かないの、
例えるなら
いつも静かで凪いでいる水面に無数の小さい波が立ってる感じ。


原因は解ってるんだ

理由がね、解らないんだよ。


ただ心の奥底がざわめくだけで考えても考えても理由がちっとも出てこない。


トッシーなら解る?


土方さんとお通ちゃんがバーチャルで結ばれただけなのに

なぜ 心がざわめくのかを。


恋でも嫉妬でもないのは断言できるのに
どうしてざわめくのかを。


……私ばっかり答えを求めるなんて不公平だよね

お詫びもかねて
あのときの質問に答えるよ。


…ごめんねトッシー

私、土方さんのほうが好きだよ

トッシーも好きだけどね。


『僕と十四郎ではどっちが好き?』

『そうだねぇ…いつか教えてあげる』


答えの返ってこない質問をした代わりに
もう届かないであろう答えを返した。





→後書き
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