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□ワンワン・パニック
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「お腹空いただろ〜」
課長は持っていたスーパーの袋からウェットタイプのドッグフードのパックを取り出し、じゃーん、と言いながら私に見せる。
私は尻尾を振った。(ドッグフード、美味しいのだろうか?)
課長は満足そうに微笑み、「今用意するからね」とキッチンへ足を運ぶ。すると何故か無言でチーフが課長の後ろへ付いていく。不審に思い、私も後ろへ付いていく。
なっ、なっ、なっ…。
私は目の前の光景に目を見張った。調理台でドッグフードを紙皿へ移す課長の後ろから、なんとチーフが抱きつき、髪にキスを落としていたのだ!
(えーっ!!っていうか、あんな風にデレデレしているチーフの顔、初めて見た…)
私はチーフに半ば幻滅する。それにしても、この状況はなんだ?不思議なのはチーフの行動に課長が全くと言っていいほど動じていないことだ。
それを良いことに、チーフは課長に対して積極的になる。すらりとした指で課長の脇腹を撫で、そのうえ首筋に顔を埋めて…この人、上司に一体何してるんだ!
「やっ!もうっ。何してるんだよ?」
やっぱり課長が困っているじゃありませんか!私は大切な人の貞操に危機が迫っているのに黙っていられる男じゃありません!
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