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□水魚わらう
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 劉備は孔明に白い目を向けながらお盆にリモコンを載せると、孔明の仕事机にグラスを置く。
「はい、冷たい麦茶だよ」
「ありがとうございます。あ、あの…」
「ん、これ?」
 劉備はにこ、と微笑み、お盆のリモコンを指差した。
 孔明は小さく頷く。「そう」
「どうするんです?」
 劉備は胸を張り、高らかに告げる。
「今日一日没収です」
「そっ、そんな殺生な!」
 劉備は、立ち上がってリモコンに手を伸ばそうとする孔明をひらりと避け、部屋を出る。
 そして襖の隙間から顔を覗かせ、孔明に優しく微笑みかけた。
「お仕事頑張ってね」
 小気味良い音を発てて襖が閉まる。
 孔明は畳の上に呆然と立ち尽くす。
 そして、みるみるうちに顔を険しくし、握り拳をつくって小さく呟いた。
「こんなクソ暑い日にクーラー無しで執筆なんて出来ますか!」



―水魚わらう―



 襖を開け、孔明は顔をしかめる。熱気が全身を包み、まるでサウナだ。
「なんでこんな暑い部屋にいられるんでしょう、あの人は…」
 首筋から胸にかけて汗が一筋、流れ、藍色に染められた着流しに汗が滲む。

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