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□メタボリック症候群にご用心
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 パソコンの画面を睨んだまま、右手をタンブラーに伸ばす。しかし右手は机をさまよい、空を掴む。
 孔明はデスクトップから目を離し、タンブラーのあった場所を見る。
 タンブラーは無かった。そういえば先程女性社員がコーヒーを入れ直しに持っていったんだ、と思い出す。
 給水室の方に視線をやる。甲高い笑い声がオフィスにまで響いていた。

「美味しいなあ。これなんていうお菓子?」
「やだ、課長知らないんですか?」
 劉備の言葉に三人の女性社員はキャッキャッと笑いながらお互いの肩を叩き合う。
「マカロンっていうんですよ」
「マカロン?へえ、初めて聞いた」
「ね、課長。今度一緒にお茶しに行きましょうよ、これ売ってるお店に。ケーキも美味しいんですよ」
「へえ?」
 第三者の相槌に、和やかだったその場の空気が一瞬にして凍りつく。女性社員が恐々と振り返る。
 そこには片手を壁に預け、もう片手を腰にあて無表情に自分たちを見下ろす孔明の姿。
 孔明は目を細める。
「私のタンブラーは?」
「す、すみません。今入れます」
「結構。自分で入れます。どうぞ、ご自分の仕事に専念なさってください」
「し、失礼します」

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