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□他人の空似
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「お兄さん、今暇?」
私は声を掛けられ、後ろを振り向く。
そして、目を見開いた。
「遊ばない?…男は嫌い?」
固まっている私の様子を窺い、目の前の男は「駄目か」と言うように踵を返そうとする。
私はその去ろうとする男の腕を掴んだ。
「いえ、」
私は内から湧き出る興奮を抑え、微笑む。
「遊びましょう」
ホテルに入り、チェックインを済ませ部屋に入ると、男は私の首に腕を回し、挨拶程度にフレンチキスをする。
私は答えるように彼の腰に手を回し、唇を貪るような濃厚なキスを返した。
「んむぅ、ん、ふぁ…」
熱の篭った吐息が鼻を抜け出る。男の顔は上気し、目もとろんとなる。
私は腰に回した手の一方を彼の尻に這わせた。
「んっ、や…っ」
彼は目を丸くし、顔を離すと次に悪戯っぽい笑みで私を見つめる。
「まったく。顔に似合わずスケベなんだ」
その言葉に私も目を細めて微笑んだ。
「まあ。…貴方を、なんて呼びましょうか」
「んー、源氏名でもいいし、お客さんの呼びたい名前で呼んでもいいよ」
呼びたい名前で呼んでもいい。
私はそれに反応し、即座に答えた。
「では、玄徳と呼ばせてください」
男は目を細めて微笑む。
「わかった。お客さんのことは何て呼べばいい?」
「孔明と」
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