With Determined Passion

□REVO.6
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とりあえず冷静に考えてみると、オイラもこいつもよくもまぁここまで馴染んだもんだ。
まだ24時間経ってねぇぞ。
まるで昔からずっと一緒にいたみたいな、そんな不思議な感覚がする。
愛はオイラのことを全部知ってるから、オイラは余計な力を入れる必要も取り繕う必要も何もない。だからかもしれない。
昨日からずっとテンション高ぇまんまだが、多分まだ興奮状態なんだろうな。愛は多分もう少しまったりした奴だ。


「待っておかしい」

「んあ?」

「今すぐその小指についてる紅を落として葉!」

「それじゃつけらんねぇだろ。ほれ、じっとして」

「〜〜〜〜っ」


紅塗らんと完成じゃないからな。
少し赤みが増しただけでも大人びて見えるから不思議だ。


「うし、んじゃいっちょ行くか」

「あい…」


うーん…橙も似合うけど、きっと白ならもっと綺麗だったと思うんよ。
愛は白が一番似合う。
まぁ愛が白い服着てると何故か花嫁さんにしか見えんのだがな。





*





「ふっ」

「あぁ…」

「っはぁぁ〜終わったー!!」


ぐっ、とオイラが伸びをする傍らで、愛が小袖姿のままくたりと倒れる。
足痺れたか?


「えい」

「何してるの…」

「いや足痺れたんかと」

「そんなわけないでしょ…」


違ったみてぇだ。


「お香の匂いが」

「あ、苦手だったんか」

「ううん逆。リラックスし過ぎちゃって眠いのなんの」

「大丈夫だ、オイラ半分寝てた」

「じいちゃんに叩かれたでしょうが」


いつものことだけどな。
現在時刻は9:07。今から着替えて出発すれば十分間に合う。


「そろそろ支度すっか」

「あっ、待って待って待って。葉の直衣姿写真におさめるから待って」

「? 愛カメラ持っとるんか?」


「何を言います葉くん!ここはシャーマンらしく、」


愛の気の流れが両手に集まるのがわかった。
膝元には一枚の紙。


「念写に決まってるじゃあありませんか」


シャッター音もフラッシュも一切なく、じわじわと真っ白な紙に色がつき始める。
え、ていうか


「愛シャーマンだったんか…」

「あれっ あ、そっか。じいちゃんにしか言ってなかったね」


いやぁ、びっくりした。
そりゃそうか。シャーマンじゃないほうがおかしいよなぁ。
そういや式神普通に見えとるし。


「念写すげぇなぁ」

「やれば出来るもんだねぇ」

「えっ、まさか」

「今初めてやった!」


初めてやって念写出来ちまうとか、おめぇそんなにオイラの直衣姿写真におさめたかったんか…
こそばゆいぞ…


「着替える…」

「あ、うん。私も着替えてくるね」

「おう」


パタパタと廊下を走り去ってく音を見送って、一枚ずつ着物を脱いでいく。
これ窮屈なんよなぁ。
ふと足元に残されたままの写真を見て、思わず吹き出しそうになった。


「もうちょっとかっこよく撮れよな…」


まんまオイラじゃねぇか。
念写は術者の心がそのまま反映される。
愛はオイラのことどうにも美化しとる気がしたから、てっきりもっとキリッとした感じになると思ったら。
こそばゆいなぁ。
まんまオイラじゃんか。
あいつすげぇなぁ。


「またてたな!」

「うぉっ早!!」

「あれ葉まだ着替え終わってないの?遅いよ」

「いやおめぇが早すぎるんよ…」


オイラまだズボンはいたとこだぞ…


「ほら早くぅー」

「うぇー、急かすなよー」


最近昼間は暑いくらいだし上着はいいや。半袖のパーカーにしよっかな。


「はい」

「…オイラ今口に出とったか?」

「へ? タンスに残った数少ない服から私が勝手にチョイスしたんだけど」

「……」


び、ビビった…
流石に霊視能力はねぇよな…ビビった…あれ厄介だからな。


「えへへー」

「ん?あ、オイラのヘッドフォン」

「一度つけてみたかったのだ!」


似合うか似合わないかで言ったら、まぁ不釣り合いって感じだなぁ。
愛は白のイメージがあるし今も白い服だからオレンジのヘッドフォンはどうにも…ピンクとか赤とかのが似合うだろうな。


「まぁいっか」

「?」

「何でもねぇ。さ、行こうぜ。じいちゃんちたぶん門で待ってる」

「うん」


東京に行くまでの間くらい、貸しててやっても。
嬉しそうな顔しとるし、音楽聴けなくても愛と話してればいいだけだ。
よし、行こう。
しばらくさよならだ出雲。
王を決める戦いのためにいざ。


「行くぞ、東京!」





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