With Determined Passion

□REVO.4
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「いやむり、むり、ちょっ絶対むり!」

「だぁーいじょうぶだって」


わかってねぇぇぇ!!
じいちゃんとはわけが違うんだぞ!

葉が何気なく放った「あ、母ちゃんパート終わる時間だな」がどれほど私を戦慄させたことか。
茎子様が…お帰りになられるんだぞ…じいちゃんとはわけが違うんだぞ葉…!


「なんでそんな嫌がるんよ」

「嫌じゃない!心の準備が整わないの!」


茎子様と言えば、私ここに来てから葉とじいちゃん以外とは会ってないのだけれど、たまおちゃんや幹久はどこにいるのだろう。
登山なう?


「逃げちゃだめだ」

「やります!僕が乗ります!…ッハ!」

「すっげぇ現実逃避してたけど大丈夫か?」

「大丈夫じゃない…問題だ…」

「ていうかエヴァ」

「葉がエヴァネタ振ってきた衝撃すら和らぐ茎子様のご帰宅…」


茎子様と言ったら葉のご生母。
お母さんなんだぞ。
私の最終目標地点が葉の嫁である以上茎子様はお姑さんなんだぞ…!
ただでさえ茎子様はうだつの上がらない幹久を補うかのようにしっかり者だ。
うっかり粗相でもしようものなら…


「あら、この子?」

「おかえり母ちゃん」

「うぇぇぇ!?」

「ほらぁ、考えごとばっかしてっから帰ってきちまったぞ」


体中の全細胞が恐らく極限に速く働いた。
まばたきする時間の半分ほどでしっかり仙骨を立たせ胸を張り教科書に載せられるレベルの正座に居住まいを直した私はこれまたまばたきする時間の半分ほどで「キリッ」という顔に表情をシフト。

完全に臨戦態勢である!


「お初にお目もじ仕ります茎子様。富士の峰より馳せ参じ奉りまする、定まらぬ星の者、名を愛と申し上げます。この度は…」

「愛…古典の教科書みたいになっとるぞ…」

「もっと力を抜いていいのよ」

「は!お心遣い誠に恐悦至極…!」

「オイラのときとぜんぜん態度違う…」

「ちょっと葉余計なちゃちゃ入れないで」

「いきなり号泣したくせにぃ」

「わー!わーわー!!何でそういうことサラッと言っちゃうのー!」

「ほんとのことだろー?」

「ばかぁ!」

「ふふ、」

「!!」


やぁーっちまったぁぁぁ!


「愛…ふふ…愛…いい名前ね」

「あ、は、はぁ」


な、なんか…
なんか茎子様悦ってらっしゃるような…?
思わず葉の服の裾をぎゅっと握る。
皺になってもちゃんと私が伸ばしてあげるから許してね葉。


「うえへへ」

「なっ何故照れた葉」

「おぉ、よく今のが照れたってわかったなぁ。流石」


そりゃあもちろん葉のことならだいたいなんでもわかりますから!


「愛…愛ちゃん。母の茎子です、よろしく」

「あ、あっはい、こちらこそ…!」

「素敵な名前ね、誰から授かったのかしら」

「うぇっ」


そういうことね!
いきなり照れるから何かと思えば!
瞬速で葉を振り返るとユルユルな照れ顔。あ、ごめん、八つ当たりする気一気に失せたわ。


「喜びも、憎しみも、元を辿ればたった一つの感情」

「ちょっ母ちゃんそれ言っちまったらオイラ恥ずかしいから勘弁!」

「その心の正体が、愛。…自分の息子ながら素敵なセンスよ、葉」


たった一つの、感情。
愛。
…名は体を表すと言うけれど、葉への愛情だけでここに来た私には似合いだ。
まだ向こうに居た頃、私が葉の為に作った名前。
葉に名乗る為の名前。
この姿も、葉の為に創ったもの。
以前の、ワタシが。
たった一つの感情。
その言葉も、私のもの。
まさか茎子様の口から聞けるとは思わなかったけれど…完全版で葉が「愛だ」と口走ったときの感情が蘇る。
ああこの名前を選んで良かったと心から思った。
作者はどうにも葉に関しては私とシンクロする節があるんだよなぁ。いや逆か。私がシンクロしてるのか。
完全版のその一言があったから、自分から名乗ることはしなかった。
葉ならきっと、この名前を選べると、選んでくれると、そう思ったから。


「さあ、晩御飯にしましょう。明日には東京へ旅立つのだから」

「お、お手伝いします!」

「麻倉の味を習得するのは難しいわよ」


ひぃ!








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あの瞬間、全ての思いが報われた気がして泣きました(´`)




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